ニットの素材別のお手入れ法や温かさの違いを知って寒さを乗り切る!
Date:2017.01.11
寒くなるとニットが恋しい!でも、動物の毛から作られたもの、合成繊維や植物性の繊維など、素材の種類も様々です。ニットってどれが一番暖かいのでしょうか。
デザイン性も重要ですが、長く着るにはお手入れが簡単な方がいいですね。
それぞれのニット素材の特徴や暖かさの違い、お手入れ法などをご紹介します。今年のニット選びの参考にしてみてください。
この記事の目次
暖かいニット素材の条件はこの3つ!
冬のニット、どれが一番暖かくて着やすいのでしょうか。ニット素材の暖かさの条件は、
- 空気の層を作れる、保温性があること
- 保湿性(吸湿性)に優れていること
- 通気性があること
より多くの空気を溜めこんでおけること、そして汗を吸って外に逃がすことが出来ること、これが暖かさの条件です。
それぞれの素材の違いによってメリット、デメリットがあるのですが、主な動物性のニット素材を暖かさだけで順位をつけるとしたら、
- カシミヤ
- アンゴラ
- ラムウール
- ウール
ではないかと思います。
あったかニットはゆったりサイズがおすすめ
ニットはピッタリサイズのものを着るよりも、若干ゆったり目のサイズを着た方が、空気をたくさん蓄えられるので暖かくなります。
定番のウールは羊の毛
ウールは羊の毛から採れます。ただ、羊の毛と一口に言ってもその中にまたランクがあるんですね。最も使われているのはメリノウールというランクです。
- メリノウール
- 繊維の細さが23μ(ミクロン)前後のものをメリノウールと呼びますが、この中でもさらにランク分けがあります。
メリノウールの種類 | 細さ(単位:μ) |
---|---|
ストロングメリノ | 23~25 |
ミドルメリノ | 20~22 |
ファインメリノ | 20~21 |
エクストラファインメリノ | 18.5~19.5 |
スーパーエクストラファイメリノ | 17.5~16.5 |
ちなみに人の髪の毛は70~80μですから、メリノウールがどのくらい細いのかがお分かり頂けるかと思います。
暖かさの秘密は空気
ウールの暖かさの秘密はクリンプと呼ばれる縮れです。毛が縮んでいることで、60%もの空気を含むことが出来るのです。
ただ、毛そのものの重さもあるので、ウールのコートなどは若干重く感じます。
軽めがいいならラムウール
生後数ヶ月以内の子羊の毛がラムウールと呼ばれるもので、通常のウールよりも断然軽くて肌触りもいいのですが、その分お値段も高いです。
ラムウールはその軽さのせいかマフラーなどにもよく使われています。
吸湿性と撥水性に優れている
吸湿性はコットンの2倍といわれており、汗をよく吸い取ります。
相反する性質のように思えますが、ウールには撥水性があるので水ははじきます。ウールのコートなどは、少しくらいの雨なら濡れませんし、汚れもつきにくいのが特徴です。
汗などの湿気は吸い取るけれど、雨などの水ははじいてくれるというありがたい機能があるのです。
ウールのお手入れ法
コートなどのアウターは基本的にブラッシングすることで対応できます。着るたびに毎回ブラッシングをしましょう。
洋服専用ブラシでブラッシングをすることにより、繊維の奥に詰まったほこりまでしっかり落とすことが出来ます。
ウール素材はこすると毛玉が出来やすくなってしまいますから、ホコリをたたき落とすようにブラシをかけます。
- 布の毛の流れと逆にブラシをかけてホコリを浮き立たせます。
- それから毛の流れに沿ってブラシをかけて、浮いてきたホコリを払い落とします。
- 帽子
- セーター
- カーディガン
なども毎回ブラッシングすれば長持ちしますよ。
高品質で高い保温性アリ!「英国羊毛」というウール
これは、その名の通りのなのですが、イギリスで育った羊から採れたウールのことです。高品質で高い保温性と伸縮性があります。
イギリスには約60種類の羊がいるそうで、
- 丘陵種
- 山岳種
- ダウン種
などの種類に分けられます。
メリノウールと比べるとやや丈夫な糸で、セーターやアウターとして使われていることが多い素材。
英国羊毛100%だとかなり固めなので、メリノウールとブレンドするなどして、柔らかい風合いを出しています。
その丈夫さから、
- コート
- スーツ
などにも使われています。
耐久性に優れている
英国羊毛はとても耐久性に優れており、クリンプ(巻縮繊維の波状の屈曲)が多いため保温効果がとても高いニットに仕上がります。
暖かさでいうとメリノウールよりも上かもしれませんね。
軽さも暖かさも着心地も抜群の「カシミヤ」
カシミヤ山羊から採れるカシミヤは、
- 中国
- モンゴル
- イラン
などが原産地です。
1頭から150~250gしか採れないため、とても希少価値の高い糸で、高価な素材です。
産毛ですから採れる量がとても少ない、というのも納得です。軽さと温かさを兼ね備えていて、着心地は抜群の素材です。
繊維は14~16μですからかなり細いですね(一番細いスーパーエクストラファインメリノでも16.5)。
とても柔らかく肌触りのよい素材で、ウールのチクチク感が苦手な人でもカシミヤならその心配はないでしょう。
保温性&保湿性が高い
カシミヤは産毛ですからとても軽くて柔らかいのが特徴です。しかも外気を遮断する保温性と一定の湿度を保つ保湿性に優れた素材で、機能性に優れています。
適度に含まれている油分が繊維を覆っているので、カシミヤ独特の風合いを醸し出します。
カシミヤのお手入れ法
カシミヤは毛玉が出来やすい素材なので、日々のお手入れがとても大切です。着たあとは毛並みに沿って丁寧にブラッシングします。
ただし、合成繊維のブラシはカシミヤの生地を傷めてしまう場合があるので、天然毛の柔らかいブラシを使うようにして下さい。
もし毛玉が出来てしまったら、専用の毛玉取りハサミで丁寧に取り除いて下さい。
クリーニングには出さない!
毎回のお手入れをしっかりしておけば、基本的にクリーニングには出さなくても大丈夫です。
水に強くないということもありますし、繊維に含まれている天然の油分が洗濯のたびに落ちていき、カシミヤ独特の風合いが失われてしまいます。
クリーニングに出す場合は、カシミヤの取扱に詳しいクリーニング店を選ぶようにしましょう。
連続して着ないこと!
カシミヤ100%のものはとても高価ですし、本物を買ったら出来れば長く着たいですよね。そのためには、お気に入りでも毎日着ないことです。
軽いけど傷みやすい…アンゴラウサギから採れる「アンゴラ」
アンゴラの毛はとても細くて中が空洞になっているので、軽いのも特徴の一つです。軽くてよいのですが、その分毛羽立ちが出来やすく、傷みやすいのがデメリットです。
アンゴラを着る時のポイント
他の衣類とこすれて毛羽立ちやすいので、組み合わせる素材はポリエステルなど滑りの良いものがおすすめです。
また、ピッタリサイズよりも少しゆとりのあるサイズを着た方が風合いを長く保つことが出来ます。
静電気が起きやすいので、静電気防止スプレーを使うといいでしょう。
アンゴラのお手入れ法
なめらかな風合いを保つために、脱いだらブラシで丁寧にお手入れを。毛並みを整えておくだけでも持ちが違います。
ふわふわしたイメージ!アンゴラ山羊から採れる「モヘア」
モヘアは羊ではなくアンゴラ山羊から採れる毛です。このモヘアにもまたランクがあって、
モヘアの種類 | 繊維の太さ |
---|---|
キッドモヘア(生後半年まで) | 24μ |
キッドモヘア(生後1年以内) | 28.5~30.5μ |
アダルトモヘア(2年半以降) | 40.0μ |
となっています。
モヘアというと細い毛のイメージがありましたが、メリノウールよりもかなり太い糸なのです。
クリンプが少ないのでウールとの混紡が多い
モヘアはクリンプが少ないため、あまり縮れのない真っ直ぐな毛なので、保温性にはあまり優れていないようです。
ですから、単品ではなくウールなどと混ぜて使うことが多いのです。
独特の光沢感のある素材
動物の毛の中では一番美しい、光沢のある素材だとされています。毛のスケール(うろこ)が少ないため、なめらかで吸湿性に優れています。
モヘアのお手入れ法
遊び毛が出易いので、着たあとはブラッシングなどをして毛並みを整えておきます。
毛が抜けやすいので、摩擦の多い素材と一緒に着ない方がいいでしょう。毛玉の原因にもなります。
基本的にはドライクリーニングですが、1シーズンに1回で十分です。
風合いがなめらかで高級感漂う!南米原産の「アルパカ」
南米ペルーやボリビア高地などに生息しているアルパカの毛で、風合いがなめらかな高級感のある素材です。
メルのウールと比べるとやや太めの毛ですが、ベビーアルパカになると22~23μくらいの太さでより柔らかい肌触りになります。
- ファカヤ種
- スーリー種
というのが主な種類です。
1頭から3kgくらいの毛が採れますが、ベビーアルパカになると1等から数百gしか採れないため、とても貴重な素材です。
毛玉になりにくく暖かい
アルパカの毛は油分が含まれているので、撥水性があり汚れにくいのが特徴。セーターやアウターに向いている素材です。
アルパカのお手入れ法
着たあとはしっかりブラッシングしましょう。できればドライクリーニングおすすめですが、オシャレ着用洗剤で手洗いも可能です。
カシミヤに匹敵する!?「アクリルニット」
ナイロン、ポリエステルとともに三大合成繊維と呼ばれるアクリルは、軽くて暖かいのが特徴です。
石油から作られているのですが、最近ではカシミヤのような手触りのアクリルニットも出てきて、なかなかあなどれません。
液体状の原料をパスタマシーンのようなものから圧力をかけて押し出して、繊維状にしてきます。
様々な素材に似せて作ることが出来るので、いかにも化繊というごわごわ感などありませんし、とにかく発色がきれいなのでデザイン性に優れたニット素材です。
暖かくて虫食いの心配もない
ウールなどに似せてクリンプを作ってあるので空気を溜め込むことも出来ます。ふっくらして本物のウールのような暖かさです。
特に、バルキー糸と呼ばれる加工をされた糸は染色時の熱で中に空気が入って膨らむので、より軽く暖かい糸に仕上がります。
また、ウールは動物素材ですから虫食いの心配がありますが、アクリル100%なら虫食いは起きません。
アクリルのお手入れ法
洗濯機で洗えるものも出てきていますが、長く着たいなら手洗いをした方がいいでしょう。
- 30度くらいのぬるま湯にオシャレ着用の洗剤を入れて押し洗いをします。
- 2回すすぎます。
- 脱水は洗濯機で30秒ほど軽くしましょう。
- バスタオルで包み、さらに水気をしっかりと切ります。
- できれば平干しをして型くずれしないようにしましょう。
しわになりにくく縮みにくくて扱いやすいアクリル。ただ、ウール混などの場合はクリーニングに出した方がいいかもしれませんね。
暖かさはやや劣るものの、肌に優しく1年中使える「コットン素材」
動物素材は毛の太さでランク分けされていましたが、植物繊維であるコットンは繊維の長さで品質が分けられています。
というのも、獣毛は元々が短いので、それだけでは糸にはなりません。毛を紡ぐ「紡績」という工程を経て毛糸になります。
それに対してコットンは綿花を糸に加工していきますが、この摘み取った綿の繊維の長さによって質が変わってくるのです。
- 白い
- 細い
- 長い
物ほど質が良いとされています。
カシミヤは14μでしたが、最も細いコットンは12μ、カシミヤに匹敵する風合いが出ます。
繊維の長さは3種類
繊維の長さは以下の3種類です。
繊維の種類 | 繊維の長さ |
---|---|
長繊維綿 | 2.8~6cm |
中繊維綿 | 2.2~2.8cm |
短繊維綿 | 2cm以下 |
このうち、ニットに使われるのは長繊維綿で、
- エジプト綿
- スーピマ綿
などが有名です。
気になる保温性はやや劣る
コットン糸はウールなどと比べると空気を溜め込む量が少ないですから、暖かさという点ではやや劣るかもしれません。
コットンのお手入れ法
コットン素材は基本的に水洗いできますが、そこは洗濯表示を必ず確認して下さい。洗濯機で洗う時はネットに入れてドライコースなどで洗った方がいいでしょう。
型くずれを防ぐためには、できればぬるま湯で手洗いした方がいいですね。手洗い方法はアクリルの洗い方を参考にして下さい。
保湿性はウールに次ぐ!再生繊維の「レーヨン」
元々シルクに似せて作られたレーヨンは、木材パルプを再生させて作られる繊維です。発色はとてもきれいなのですが、水には弱いのが特徴です。
他の素材と組み合わせたり、水に強い素材が開発されるなど、どんどん進化している素材でもあります。
ウールに次ぐ高い保湿性
保湿性、吸湿性に優れていて、天然のシルクと同じくらいの保湿性があります。暖かさでいうと、ウールやアクリルにはかなわないけれど、コットンよりは暖かいです。
美しい光沢感とドレープ性
とろんとした生地は光沢感があり、美しいドレープ性を持っています。肌触りもいいですし、下着の上に直に着てもチクチクしません。
カーディガンなどにすると美しいラインを出せる素材です。
レーヨンのお手入れ法
強度があまりない素材なので、洗濯すると縮みやすいです。出来ればドライクリーニングに出した方がいいでしょう。
洗濯表示を確認して家で洗濯できるなら、手洗いか洗濯機のドライコースでお手入れしてみてもいいでしょう。
夏は涼しくて冬暖かい「シルクニット」
シルクは蚕が作る繭から採れる天然繊維です。かつては日本でもたくさん作られていましたが、国産のシルクはだいぶ少なくなってしまいました。
シルクは三角形の繊維が何本も重なり合って1本の繊維を形成しています。そのせいで繊維の間に隙間が出来て吸湿性に富んだ繊維になるのです。
吸湿性はコットンのおよそ1.5倍といわれており、夏は汗を逃してさらっとし、冬は体温が逃げるのを防いでくれるので温かいのです。
シルクニットは摩擦に弱い
肌触りもよく温かいシルクニットは、肌にも優しいのでアトピー肌の人にも向いています。
ただ、摩擦に弱いというのがデメリット。他の布地とこすれると毛羽立ち易くなります。
シルクニットのお手入れ法
シルクは毛羽立ちやすいので、ブラッシングしてはいけません!着用後の汚れを落とす時は、柔らかい布でさっと拭くようにします。
動物素材のニット、保管の注意ポイント
ウールやカシミヤなどの獣毛繊維は、防虫剤を使わないと虫食いの恐れがあります。私たちの毛と一緒、たんぱく質ですから、格好の虫のえさになります。
しばらく着ない時や、長期保管する時は必ず防虫剤を使うようにして下さい。
編み方の違いによる呼び名の違い
素材の違いだけでなく、編み方の違いなどでもニットに種類があります。
ニットといえば冬には欠かせないファッションアイテムですが、毛糸ばかりがニット素材ではありません。1本の糸を織るのではなく「編んで作った生地」はすべて「ニット」と呼びます。
日本で「ニット」というとセーターのイメージが強いかと思いますが、肌着でもアウターでも編んだ素材であればニットです。
- ハイゲージニット
- 細い糸で細かく編まれている生地
- ローゲージニット
- 太い糸でざっくり編まれている生地
- ジャージー編み
- ニットの基本的な編み方でメリヤス編みとも呼ばれます。ストレッチ性があり、様々な衣類に使われている最も一般的な編み方です。
- カットソー
- 本来は裁断(cut)と縫製(sew)という作る過程をさす言葉ですが、日本では薄手の伸縮性のある素材のTシャツなどの製品そのものを指す言葉として使われていることが多いです。
たとえば、同じ素材でもざっくり編まれている方が空気をたくさん溜め込めるので暖かいです。
ただ、カシミヤのように繊維の細い素材は、「ハイゲージカシミヤ」と表示されている物の方が断然手触りがいいですよ。
ニット素材を極めて使いこなそう!
ニットって、意外とたくさんの種類があることがお分かり頂けたでしょうか。暖かさで選ぶのか、素材の肌触りで選ぶのか、色々な視点がありますね。
また、ニットのお手入れは着たその日にきちんとしておくことが大切です。
デザインも大事ですが、大人になったら長く着られる質の良い素材のニットも持っておきたいものですね。次にニットを買う時は、素材にも注目して選んでみませんか。”
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