女性に多い甲状腺ホルモンの病気と症状。異常を見逃すな!
Date:2016.04.26
女性には理由は分からないけれど、何だか体調が優れないということがあります。こういう症状が出ている時の多くは女性ホルモンの分泌が影響しています。
特に30代後半になると、更年期の症状が出る人もいるため、「もしかすると更年期が関係しているのかも」と自己診断をしてしまうこともあります。しかしこういう症状が出たからといって、更年期というわけではありません。
中には女性に多い、「甲状腺ホルモン」の病気を発症している場合もあります。甲状腺ホルモンの病気とはどういうものがあり、それぞれどういう症状が出るのでしょうか。
体全体にホルモンを出し体調を整える働きをする「甲状腺」
甲状腺とは喉仏の下にある器官で、蝶のような形をしています。
ここから分泌される甲状腺ホルモンは、脳の視床下部がチェックし、甲状腺ホルモンの分泌量を調整しています。
この甲状腺に異常がある場合、脳でホルモン分泌の信号を出してもうまく調整ができず、甲状腺ホルモンの病気を発症してしまいます。
20~30代女性に特に発症が多い「バセドウ病」
バセドウ病は甲状腺ホルモンの分泌が過剰になり、代謝が異常に活発になる病気です。男性と女性を比較すると女性は男性の4倍と多く、特に20~30代女性の発症が多いと言われています。バセドウ病には次のような症状が出ます。
- 汗を多量にかく、のぼせが出る
- 運動をした時のように動悸、脈が速くなる
- ダイエットをしていないのに痩せる
- イライラする
- 指先に震えが出る
バセドウ病は、血液検査でFT3とFT4が基準値より高く、TSHが基準値より低くなります。
そして抗体検査で、甲状腺を刺激してホルモン分泌を過剰にしてしまう抗TSH受容体抗体(TRAb)の値を調べます。この値が1.9以上の場合、バセドウ病と診断されます。
※FT3・FT4・TSHの基準値については、後述の検査方法の項目で詳細説明があります。
バセドウ病の治療法とは
バセドウ病の治療は「甲状腺ホルモンを過剰分泌させないようする」ことを目的として行います。治療法は大きく分けて次の3つがあります。
- 内科療法(抗甲状腺剤の内服)
- 外科療法(甲状腺の一部を除去する手術)
- 放射性アイソトープ療法(放射性ヨードの内服)
どの治療法にも、メリット・デメリットがあります。治療法は患者さんの体調や症状で選択されますが、最も多い治療法は内科療法になります。抗甲状腺薬を毎日飲むだけなのですが、治療期間が長期間に渡るのがデメリットとされています。
抗甲状腺薬で治りにくい人や、副作用がある人は外科治療を行います。短期間で正常に戻るので、芸能人などは外科治療を受ける人が多いようです。
外科治療後に再発した人や心臓病などがある人は、放射性アイトソープ療法を受けます。投薬を行うだけなので治療は簡単なのですが、妊娠したい人や妊婦さんは受けることができません。
成人女性の20~30人に1人が素因を持つと言われる「橋本病」
橋本病は甲状腺ホルモンの分泌が低下し、代謝や臓器の働きが弱まる病気です。実はこの橋本病、成人女性の20~30人に1人が橋本病の素因を持つと言われています。その中で治療が必要なのは3割程度です。
橋本病の名前の由来は、この病気について初めて発表をした橋本策博士です。
橋本病には次のような症状が出ます。
- 気分が塞ぎこむ(鬱のような状態)
- 抜け毛が増える
- むくみが出やすくなる
- 動作が遅くなり、素早く動けない
- やる気が出ない
- 記憶力が低下する
橋本病はFT3とFT4が基準値よりも低く、TSHが基準値より高くなります。
そして抗体検査で、甲状腺にある酵素である抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)と甲状腺にあるタンパク質である抗サイログリブリン抗体(TgAb)の値を調べます。
TPOAbが50以上、TgAbが40以上の場合、橋本病と診断されます。この2つの抗体の値が高いと自己免疫が甲状腺を攻撃するため、甲状腺ホルモンが減少してしまいます。
橋本病の治療法とは
橋本病は全員が治療を行うというわけではありません。
- 甲状腺の機能が低下している人
- 甲状腺が腫れて喉に違和感がある人
この2つの症状がある人は、治療が必要です。橋本病でも甲状腺の機能が正常な場合は、6か月ごとに受診・検査を受けて様子をみます。
甲状腺の機能が低下している人は、低下している甲状腺ホルモンを内服で補います。これはホルモンを補充していることになるので、一生薬を飲み続けるような治療になります。
甲状腺が腫れて喉に違和感がある人は、甲状腺ホルモンの内服はもちろん、腫れが酷く喉を圧迫している場合は手術を行うこともあります。
バセドウ病・橋本病以外の甲状腺疾患
バセドウ病・橋本病以外でも甲状腺疾患はあります。甲状腺に疾患があると首部分が腫れたり、息切れや疲労感が出るので注意が必要です。
主な病気は次の3つがあります。
- 腫瘍性疾患(甲状腺がん)
- 単純性びまん性甲状腺腫
- 亜急性甲状腺炎
上記は甲状腺ホルモンの異常ではなく、甲状腺に異常が出て起こる疾患です。これも甲状腺検査で発見することができます。
甲状腺疾患の診察や検査方法の流れ
普通に生活していても、「甲状腺の異常がある」と気づくことはありません。実際、症状として出るものが更年期と同じようなものが多いため、内科や婦人科での診察を受けるという女性が多いようです。
そこで異常がない場合は、甲状腺内科などを受診すると甲状腺疾患が分かることがあります。甲状腺疾患の診察や検査方法は知られてないこともあるので、どういう診察・検査をするか調べてみました。
問診・触診
最初は内科などと同じく、問診と触診を行います。その際に必ず医師に伝えなくてはいけないことがあります。
- いつから症状が出ているのか
- 親族に甲状腺疾患の人がいるか
- アレルギーがあるか
これは私が実際に体験したことですが、内科で診察を受けた時に症状しか話さなかった為、問診と診察をして薬を処方してもらったのですが、次の診察時に「親族に過去に甲状腺疾患を患った人がいる」と伝えると、甲状腺の検査をすることになりました。
甲状腺疾患は遺伝するわけではありませんが、可能性がないわけではないので必ず医師には伝えるようにしましょう。問診が終わると、甲状腺のある部分を触診し、腫れやしこりなどがないかを検査します。
血液検査・抗体検査
次に血液検査をします。血液検査で甲状腺の状態を調べる時、3つのホルモンの値を調べます。
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- 遊離トリヨードサイロニン(FT3)
- 遊離サイロキシン(FT4)
この3つの値を調べることで、甲状腺に異常がないかどうかを知ることができます。TSHは血液中の甲状腺ホルモンの濃度を保つため、視床下部からの命令で下垂体から分泌されるホルモンで、基準値は0.35~3.8μlU/mlとなっています。
FT3とFT4は甲状腺ホルモンの一種で、
- FT3の基準値は2.2~4.1pg/ml
- FT4の基準値は0.7~1.7㎎/dl
となっています。病院によって多少差はあるようですが、平均的にこの範囲と言われています。
血液検査でホルモン値に異常がある場合、抗体検査を行います。甲状腺疾患の中には免疫機能がトラブルを起こし、甲状腺を刺激する抗体を作り出すことがあります。この抗体の種類で病気が違うので、抗体の有無や種類を調べる検査を血液で行います。
血液検査を行う際に一緒に抗体検査を行う場合もありますが、多くは血液検査の結果で抗体検査を行うかを決めるようです。
エコー検査・細胞検査
触診で甲状腺部分が腫れたり、しこりがある場合はエコー検査を行います。エコーの場合、腫瘍の有無や位置、大きさの診断ができます。
ここで腫瘍が発見された場合、良性か悪性かを判断するために細胞検査を行います。細胞検査は腫瘍がある部分に注射器を刺して、中の細胞を取り出し検査をする方法です。これで良性か悪性の判断を行います。
健康な女性も甲状腺疾患には注意が必要!
甲状腺ホルモンの病気は、出る症状が他の病気と似ているため、甲状腺疾患を疑わない人が多いです。甲状腺ホルモンの病気や甲状腺疾患は女性に多いため、今健康な人も注意が必要です。
体の不調が長時間つづく時や、診察を受けても改善されない場合は、甲状腺疾患を疑って血液検査や甲状腺内科での受診を行うようにしましょう。
血液検査は内科でも行うことができるので、そこで甲状腺の血液検査をしてもらうよう医師に相談することもできます。
「私は健康だから大丈夫」「家族に甲状腺疾患の人がいない」と安心するのではなく、常に注意をしておくようにしましょう。
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