出産経験なしだからこそ注意したい病気とは?定期的な健診が大切
Date:2017.11.16
女性ならではの病気というと、婦人科系の病気をいくつか想像できると思います。
全ての女性がそれらの病気になるリスクを同じように持っているわけではありません。
実は出産経験があるかないかによって、それらの病気のリスクには違いが出てくるのです。
ここでは、出産経験がないことによってリスクが高まる病気を知っていきましょう。
この記事の目次
ホルモンが影響?気をつけるべき婦人科系の5つの病気
出産経験が無いことが影響するということは、つまり月経回数の多さが影響する、と言い換えることができます。
月経を起こす為に必要不可欠なホルモンである女性ホルモンの「エストロゲン」が、逆に引き金となってしまう可能性のある5つの病気をみていきましょう。
最も多い病気、乳がん
国立がん研究センターが公表している「がんの登録・統計」のデータによると、40歳前後の女性のがん罹患数1位は乳がんです。
ある国内の研究結果によると、乳がんの罹患者のうち出産経験のない人は、出産経験のある人の2倍以上になると言われています。
乳がんとは、乳房内の乳腺にできる腫瘍で、女性ホルモンのエストロゲンの刺激を長期的に受けることにより成長すると考えられています。
出産を経験していないことにより、エストロゲンの刺激を長期間継続して受け続けることが、乳がんの発症率を高めていると考えられています。
乳腺にできる腫瘍にも様々な種類がありますが、乳がんは早期に発見することにより生存率も高くなります。部位別に見た5年生存率は91.1%であり、早期に対処することの重要性がよくわかります。
子宮体部に発生する、子宮体がん
子宮体がんは、先の国立がんセンター公表の40代女性罹患数によると、乳がんに次いで2位と続いています。
出産経験がないことによりそのリスクが高まる要因として、やはりエストロゲンの長期的な刺激が考えられます。
そして月経回数は出産を経験していないことにより圧倒的に多くなります。1度の出産により、少なくとも1年間、長ければ2年程度は月経が起きない期間となるので、回数にすると1回の出産につき12~24回ほどの差となってきます。
毎月子宮内膜が厚くなっては剥がれ落ちることを繰り返しているわけですから、その回数の多さによる影響は大きいでしょう。
子宮体がんの部位別罹患数から見た5年生存率も81.1%と高いものです。しかし自覚症状を確認できるようになってからでは進行してしまっている場合も多いので、定期的な検査による発見が重要です。
無症状のうちに進行する、卵巣がん
初潮が来たときから閉経をするまで、毎月排卵は起こります。卵巣から卵が排出されるたびに、僅かずつではあっても卵管等に傷をつけることが卵巣がんの一因となると考えられています。
初潮が来る年齢は、昔の女性と比べると低年齢化しています。栄養状態も良く生活環境も整ってきたことが一つの理由として考えられますが、女性の一生における月経という観点からみると、好ましいことばかりではないかもしれません。
妊娠が成立した時から、出産を終え授乳期間を経て最初の月経が起こるまで、排卵もストップした状態が続きます。この回数の差が、出産経験のないことによるリスクの高さに影響すると考えられます。
生殖年齢の女性の10%にあると言われる、子宮内膜症
子宮内膜症とは、受精卵を受け入れるために厚くなる子宮内膜の組織が、何らかの理由により子宮周辺の、本来作られるはずの内部以外の所に増殖してしまう症状のことをいいます。
月経と同じタイミングで子宮以外の場所にできた組織も増殖しますが、子宮内のものと違い経血と一緒に排出することが出来ない為、それらは体内に溜まっていき、内臓の周囲の組織と癒着を起こしたりします。
月経と周期を共にしているので、当然出産を経験していないことで圧倒的に月経回数は多くなり、もともと内膜症の症状を抱えている人にとっては悪化の要因となります。
原因そのものはいくつか説がありますが、発症者の数が増加傾向にあることから、女性がエストロゲンの分泌にさらされる期間が長くなっていることも大きな一因であると考えられています。
良性だからと侮れない、子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮内にできる筋腫のことですが、大きさやできた部位によって症状も影響も違ってきます。
かなり大きくなるまで症状や影響のない部位もあれば、不妊の原因となったり、妊娠した場合に早産や流産の原因となってしまう部位もあります。
筋腫を成長させるのはやはり月経を司る女性ホルモンです。従って、月経回数が多ければ多いほど筋腫が成長し悪影響を及ぼすリスクが高くなります。
治療法の一つに、薬で閉経状態を作り出すものもあります。女性ホルモンの分泌を抑えることで、筋腫の大きさが半分近くまで小さくなります。しかし投薬をやめると、つまり女性ホルモンが再び分泌されると、すぐに元の大きさにもどってしまう為、閉経までの一時的な治療として行われるようです。
女性ホルモンと深く関わって成長していく為、出産を経験していないことが与える影響は大きいと言えるでしょう。
婦人科系のこれらの病気の罹患者数は、どれも増加の一途を辿っています。
これらの病気に大きく関わる女性ホルモン、エストロゲンとは本来何のために分泌されるのでしょうか?このホルモンの大切な役割についても、知っておきましょう。
本当は女性の味方!欠かせないホルモン、エストロゲン
女性の体のリズムを作り出す為に重要な働きをしているホルモンは、2種類あります。
一つはエストロゲン(卵胞ホルモン)、もう一つはプロゲステロン(黄体ホルモン)です。
女性の体は、排卵を境に低温期と高温期に分けられますが、エストロゲンは月経の後半頃から徐々に分泌量が増えてゆき、排卵までの低温期の間分泌され続けます。
プロゲステロンは、排卵を境に高温期となる間、分泌されています。
エストロゲンには主に次のような働きがあります。
- 卵胞を成熟させる
- 受精卵の着床に備えて子宮内膜を厚くする
- 女性らしい、丸みを帯びた体にする
- 血管を拡張させて熱を発散させる
- 基礎体温を下げる
- 自律神経を整える
どれも女性の体を健康で美しく維持する為に必要なことばかりです。
エストロゲン、プロゲステロンともに、正常に十分に分泌されてこそサイクルが成り立っているのです。
では、昔の女性と現代の女性はどれほど違う人生を送っているのでしょうか。それぞれ妊娠・出産の時期や回数と比較し、私たちの生活環境の変化が体に及ぼす影響を詳しく見てみましょう。
大正時代の女性の20代はほぼ出産!現代と違う出産子育て事情
大正時代の一般的な女性の人生は、今とは全く異なるものでした。
17~18歳頃に結婚をして、20歳前後で第一子を出産するのがごく一般的な流れでした。その後平均的な出産回数は5回、末子の出産が35歳前後で、20代から30代前半はほぼ妊娠・出産・授乳を繰り返していたことになります。
医学的に見ても、生物学的な妊娠適齢期は20歳前後、となっていることを考えると、自然の理にかなった出産サイクルではあったのでしょう。
現代の女性の第一子出産の平均年齢は30歳前後です。少なくとも20歳代まるまる10年分ほどは、月経回数に違いが出てきます。
10年分の月経回数は120回に及びます。それに加えて産後の授乳期間の長さもミルクのなかった時代とは異なります。
現代では様々なライフスタイルに合わせて、乳児期の授乳方法も多様化しています。必ずしも母乳を続けなくとも、ミルクを与えることができ、また離乳食の時期も早くなっています。
出産を経験していないことにより、体が受けるホルモンや女性ならではのサイクルの及ぼす影響は、仕事もプライベートもと輝く女性の新たな生活スタイルをよりよいものにする為に、必ず知っておかなければいけない問題です。
不調が起きる前こそ大切!定期健診で健康維持を
女性ホルモンの影響を長く受けることでリスクが高まるいくつかの病気をご紹介しましたが、そのどれもが、定期的な健康チェックでその進行を遅らせたり改善したりすることができるものです。
逆に、チェックしないで知らず知らずのうちに症状が進行してしまってからでは、命に関わる重大なものになりかねません。
自分の体を定期的な健診などでチェックして状態を把握し、より健康的な状態へと意識を高く持つことが重要ですね。
女性が活躍する為の社会的な環境は以前に比べるとだいぶ整い、結婚や出産についても生き方の一つとして様々な選択肢を選ぶことができるようになりました。
十分にキャリアを積んでから、経済的に安定してから、満を持して出産をと考える人や、選択肢として出産を選ばない人も今は多くいます。
出産が私たちの人生に与える影響を考えるとき、その経験の有無が左右するリスクがあるということを忘れずに、毎月女性ならではのホルモンの影響を受け続けることをよく理解して、自身の体としっかり向き合っていきましょう。
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