若い女性に脳梗塞が増えている!30代から気をつけたい前兆とは
Date:2017.02.18
脳梗塞、という病はとても有名です。この病名を聞いたことがないという人はいないでしょう。
脳梗塞で亡くなる人は、年間およそ6万6千人を超えます。他の脳血管疾患も含めると、日本人の死亡原因の第4位になった年もありました。
この脳梗塞、なんとなく「高齢者や男性のかかりやすい病気」、というイメージを持っていませんか?
じつは最近、20代、30代、40代という若い世代にも、脳梗塞を発症する人が急増しているのです。
そして男性の病というイメージに反し、多くの女性が若年性脳梗塞の予備軍と言える状態になっています。
それはいったい何故なのでしょうか?
今回は、若い女性に迫りつつある「若年性脳梗塞」のリスクと、予兆の見分け方、予防や対処の仕方をまとめてお伝えします。
この記事の目次
【1】意外と知らない?脳梗塞の恐ろしさ
病名は耳にするものの、実際にどんな病気で、具体的に何を招くのか、知らずに過ごしてしまうことも多いものです。
まずは、脳梗塞という病気がどんなものかを見ていきましょう。
脳梗塞とはこんな病気
脳梗塞というと「突然意識を失って倒れる」というようなイメージがあります。こういったケースで何故昏倒が起きるのと言うと、脳に問題が起きたためです。
脳梗塞は、何らかの原因により脳への血流が滞ることで、起こります。脳は酸素をエネルギーにして動いていますが、酸素を運んでくれるのは他でもない血液です。
血液が届かなくなると、酸素も栄養も脳へ配達されなくなります。すると脳細胞はうまく働けないどころか、壊死を始めてしまうのです。
- まず、血液の流れが滞る
- それにより、酸素や栄養が脳に運ばれなくなる
- 結果、酸素不足の脳細胞が死んでしまう
これが脳梗塞のメカニズム。それ自体は単純とも言えますが、脳細胞の壊死が引き起こす症状が厄介であり、危険なのです。
脳梗塞が引き起こす症状
脳梗塞が引き起こす典型的な症状は、以下のようなものです。
- ろれつが回らなくなる
- 言葉が出てこなくなる(失語症状)
- 顔に歪みが出る
- 表情が思うように動かせなくなる
- 片側の手足に力が入らない
- 物が二重・三重に見える
- 視野が狭くなる
- 目の焦点が合わなくなる
- 人の言葉が理解できなくなる
など、いずれも脳の機能が正常に働かなくなった結果、情報をうまく処理できず引き起こされる現象です。
身体からの情報を受け取り、それを処理して筋肉に指令を出す……という働きが、うまくいかなくなるのです。
脳梗塞と脳卒中とのちがい
ところで「脳梗塞と脳卒中って同じなの?それとも違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、脳梗塞は「脳卒中の一種」です。脳卒中というのは、正式名称を「脳血管障害」といって、その名のとおり脳の血管に発生した障害によって引き起こされる、さまざまな病気の総称です。
脳卒中は、大きく2つの種類に分けられます。
- 血管が詰まるもの
- 血管が破れるもの
の2つです。
このうち、「1.血管が詰まるもの」に該当するのが、今回のテーマ・脳梗塞。
ちなみに「2.血管が破れるもの」に該当するのは、脳出血や、くも膜下出血など。
これらは全て、脳の血管に障害が起き、酸素や栄養が運ばれなくなったことが原因で起こります。
脳梗塞の種類3つ
脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」。この脳梗塞は、さらに3つのタイプに分けられます。
詰まってしまう血管の太さ、また詰まり方によってタイプ分けがされています。各タイプごとに、原因も異なる傾向があります。一つずつ簡単に見ていきましょう。
- (1)ラクナ梗塞
- 脳の細い血管が詰まるタイプ。日本人に最も多い型の脳梗塞で、自覚症状がないケースも多いと言われます。MRIやCTスキャンで初めて発見されることも。原因は、高血圧により引き起こされることが多いです。
- (2)アテローム血栓性脳梗塞
- 脳の太い血管や、頸動脈が詰まるタイプ。動脈硬化で血管が狭くなったところに血栓が詰まり、血流を妨げてしまいます。生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)が原因でなることが多いと言われます。
- (3)心原性脳塞栓
- 脳の比較的太い血管が詰まるタイプですが、血栓の正体がちょっと特殊です。なんと、心臓にできた血栓が血管を伝わって脳に到達し、脳梗塞を引き起こしてしまうという意外なもの。心臓に血栓を作りやすい不整脈や、拡張型心筋症など色々な病が原因で引き起こされる可能性があります。
このように、一言に「脳梗塞」と言っても、みんな同じように引き起こされているわけではないのです。
【2】心当たりはありませんか?若年性脳梗塞の特徴
さて、脳梗塞の中でも50歳代以下の人がかかるものを、若年性脳梗塞と呼びます。
血管は加齢とともに硬く、また細くなる傾向があるため、脳梗塞も一般的には高齢の人がかかりやすいと思われがちです。
でも最近は、血管が元気なはずの若者が脳梗塞になってしまうケースが増えています。これは、現代の生活習慣に大きな原因があると言えるでしょう。
若年性脳梗塞の原因の特徴
若年性脳梗塞に多く見られる原因には、特徴的な傾向があります。
一般に、脳梗塞のリスクとして挙げられるのは以下のような要因です。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症(高脂血症)
- 肥満
- 喫煙
- 飲酒
- 運動不足
など。これらの中には加齢とともに徐々に進行していく要因もあり、そのことが脳梗塞=中年〜高齢の男性、というイメージを作り出しているのかもしれません。
しかし若年性脳梗塞は、少し異なる要因で引き起こされるケースが多いとされています。
若年性脳梗塞に多いとされる要因は、
- 過労
- ストレス
- 激しい運動による頸動脈解離
など。
さらに若い女性では、
- ピルの服用
- 頭痛薬や睡眠導入剤の長期服用
なども、ごく稀ではありますが、脳の血管を破損し脳梗塞につながった事例が報告されています。
このように、若い世代の脳梗塞は、現代生活ならではの要因で引き起こされることが多いのです。
原因に繋がる生活習慣
では具体的に、どんな生活習慣が若い世代の脳梗塞を引き起こすのでしょうか?
薬の処方に関しては、医師の処方に従う限り安全と考えて良いでしょう。その他の要因を引き起こす生活習慣としては、以下のようなものが考えられます。
- 不規則な食生活
- バランスの偏った食事
- 過酷な環境下での仕事
- 睡眠不足
- 強いストレス、または継続的なストレス
など。
昔に比べ、現代の食事は脂質が多く、高カロリーです。また食事や睡眠などの時間も不規則になり、夜遅くまで起きている人も増えました。
一方、仕事や人間関係などストレスを抱える機会も多いもの。長時間労働による過労死は社会問題にもなっています。
働く時間が長すぎることはもちろんですが、そうでなくとも強いストレスに晒され続けることそのものが、脳梗塞のリスクとなります。
現代的とも言えるこれらの生活は身体にじわじわと負荷をかけ、血管や脳の損傷を招く原因となりやすいのです。
【3】おかしいな?と思ったら……予兆の見分け方
命に関わる脳梗塞。たとえ運良く死を免れたとしても、脳の損傷は元には戻りません。重い後遺症が残るケースも多いものです。
そして、脳梗塞の治療は時間との勝負と言われ、発症からできるだけ早く処置をすることが重要です。
発症すればおおごとになってしまう脳梗塞、なんとか事前に気づくことはできないのでしょうか?
予兆(TIA)に気づくポイントは
じつは、脳梗塞には予兆と言える症状が現れることが多いです。
これは「TIA(一過性脳虚血発作)」と呼ばれるもので、脳への血液が何らかの原因で一時的に滞ることで引き起こされます。いわば「小さな脳梗塞」というような状態です。
TIA、つまり脳への血液が滞ると、以下のような症状がごく短時間現れます。
- ろれつが回らなくなる
- 表情がうまく動かせない
- 足がふらつく(まっすぐ歩けない)
- 手に持っていた物を落とし、うまく拾えない
- 視野が欠ける、物が二重に見える
- 「イー」と口を横に伸ばしたとき、左右の高さが違う
など。
でも、TIAの発作は脳梗塞の予兆。おさまってから数時間〜数日で、本格的な脳梗塞を引き起こすケースがほとんどです。
もしも普段と違うこういった症状を自覚したら、すぐに医療機関で検査を受けましょう。
女性は予兆に気付きにくいって本当?
一概にそうとは言えませんが、「女性は脳梗塞に気付きにくい」という説があります。
その理由は、女性は男性よりも痛みに強いため。また月経による体調不良などを日常的に経験しているため、「ちょっと身体がおかしいな」と感じても「まあ、たいしたことはないだろう」と放っておいてしまいがちなのだと言います。
若い女性はとくに、自分と脳梗塞のイメージが結びつかないかもしれません。「大騒ぎするのは恥ずかしい」という思いもあるかもしれません。
でも、重篤な事態を招く前に対処した方が軽度の治療で済みますよね。
身体の様子がいつもと違うと感じたら、ぜひ躊躇せず医療機関を受診しましょう。
【4】スピード対応が何より肝心!脳梗塞の対処と予防
実際に、脳梗塞、またはTIA(脳梗塞の予兆)の症状が現れた場合、具体的にはどのように対応したら良いのでしょうか。
また、脳梗塞を引き起こさないためには、どのようなことに気をつけて生活したら良いのでしょうか。
順番に見ていきましょう。
脳梗塞の治療は時間との勝負!
脳梗塞の治療には、血管を詰まらせる原因となった血栓を除去するため、専用の薬剤を用います。この薬剤が効果を発揮できる時間は、発症から4.5時間以内であると言われています。
それ以降の治療には血管にカテーテルを通す方法を用いますが、こちらは発症から8時間が勝負です。
また、脳梗塞を発症しやすい時間帯は早朝〜朝にかけてと言われます。起床時など、急に血圧が上がるタイミングが最もリスクが高いのです。
早朝でも深夜でも、躊躇わず救急車を呼ぶなど早急な対処をしましょう。
症状を判断する基準は「FAST」で覚えよう
症状が現れた際、脳梗塞かどうかを簡単にチェックすることができます。「FAST」という基準を用いて、自分に起きている症状を見分けます。
FASTとはそれぞれ英語の頭文字で、
- 「F」……FACE(顔)
- 「A」……ARM(腕)
- 「S」……SPEECH(言葉)
- 「T」……TIME(時間)
のこと。
具体的なポイントとして、次のように見極めていきます。
- FACE(顔)
- 鏡を見ながら口角を上げて笑ってみましょう。自然な笑顔が作れない、片側だけ口角が上がらないなどの症状があれば、脳梗塞により顔の筋肉が麻痺している可能性があります。また、口が片方だけ閉じないなどの場合も同様です。
- ARM(腕)
- 両腕をまっすぐ前に、肩の高さまで持ち上げてみましょう。もし片方だけ自然と下がってきてしまうなら、脳梗塞で腕の筋肉に麻痺が生じている可能性があります。
- SPEECH(言葉)
- 近くに誰かがいれば、簡単な短い文章を言ったり、言ってもらったりしましょう。「今日は天気がいいですね」など、簡単な会話をします。もしもろれつが回らなかったり、相手の言っていることを理解できず、返事ができなかったりする場合、脳梗塞の可能性が高いです。
- TIME(時間)
- 最後の「T」は時間のこと。早急に対応すべきである、という意味です。FからSの3つの指標のうち、どれか1つでも当てはまる場合は、一刻も早く医療機関を受診すべきです。
数時間でも放置すれば取り返しがつかない脳梗塞。病院での待ち時間もありますし、検査そのものにも時間がかかります。
病院の受付や救急隊員にも、「FASTのうち、こんな症状が出ている」ということを可能な限り伝えましょう。早急な対処が必要であることを理解してもらうことが重要です。
脳ドッグという選択
脳梗塞の中でも軽度のもの、いわゆる「かくれ脳梗塞」と呼ばれるものは、症状がなく無自覚のうちに発症し、治癒していることがあります。
そういった小さな脳梗塞を見つけ、重度なものへの進行を予防する措置としては、「脳ドッグ」がオススメです。
脳ドッグは、脳外科の専門病院や、総合病院、大学病院などで受けることができる脳の検査です。
主に
- CT検査
- MRI検査
- MRA検査
- 頸部の超音波検査
などを行い、脳の健康に異常がないかどうかを調べることができます。
脳は、一度損傷を受けると元に戻すことがきわめて難しい部位で、脳の疾患は総じて時間との戦いです。
定期的に脳ドッグを受けることで、重篤な病の兆候を事前に見極めることができれば、それだけ早く対処ができます。
若年性脳梗塞を寄せ付けない生活習慣
脳梗塞を予防する上で何よりも大切なのは、やはり自分の生活習慣の見直しです。
若年性脳梗塞の原因は、従来の脳梗塞に加え現代的な生活の乱れも含まれます。以下を参考に、日常の見直しから始めてみましょう。
(1)睡眠、食事を大切にする
規則正しい生活は脳の健康の第一歩です。とくに睡眠と食事は健康に深く関係しています。
睡眠では、毎日規則正しい時間に寝起きをするよう心がけ、また脳が充分休息できるよう、睡眠時間もしっかり確保してあげましょう。
食事は、野菜とタンパク質を中心とした栄養バランスの良いものを。血栓を作る原因となりやすい脂質を控え、暴飲暴食を避けましょう。
(2)飲酒・喫煙を控える
喫煙は、脳梗塞のリスクを高めることが分かっています。煙草が好きな人も、本数を少し控えるなどの対策をおすすめします。
また、ニコチンにはアルコールに溶けやすいという性質があります。このため、飲酒をしながらの喫煙はとくにニコチンの吸収率が高く、身体への負担も大きくなります。
食事に気をつかうことと同様、飲酒・喫煙の習慣もほどほどがイチバンです。
(3)適度に運動を行う
運動不足は血管の老化を早めます。老いて硬くなった血管は動脈硬化につながり、血栓の詰まりやすい環境を作り出してしまいます。
血管を柔らかく若々しく保つには、日常的によく動くことが有効です。
といっても激しいスポーツである必要は全くありません。むしろウォーキングやジョギングなどのゆるやかな運動を、毎日少しずつでも続けることが大切です。
- 毎日20〜40分ほど歩く
- 自動車ではなく自転車を使う
- 気づいたときにストレッチする
など、身体をゆるやかに、でもこまめに動かす習慣が、脳梗塞の予防に繋がります。
同じ姿勢を取り続けて身体が固まってしまうと、血行が悪くなり、血栓ができやすくなります。最近多いエコノミー症候群と同じメカニズムです。
固まってしまったな、と感じたら、立ち上がって少し身体を動かすよう意識しましょう。
(4)激しい運動には注意する
運動不足も良くないのですが、急に激しい運動をすることも決して良くありません。
とくに、
- フットサル
- ゴルフ
- スノーボード
- ボルダリング
といったスポーツをするときには、注意が必要です。激しい旋回の動きに耐えきれず、脳の血管が裂けてしまうことがあるためです。
この脳血管の損傷を「脳動脈解離」といいます。
脳動脈解離は、首をひねる動きをするスポーツ、また頭に衝撃のかかるスポーツなどで起きやすく、若い人が脳梗塞を引き起こす大きな要因の一つとされています。
また、汗を大量にかくスポーツにも注意が必要です。汗で身体の水分が失われると、血液がドロドロして流れづらくなり、血管が詰まりやすくなるためです。
ホットヨガなどで大量に汗をかくことが分かっている場合は、必ず水分補給にも気を配りましょう。
(5)ストレスを溜めない
ストレスは身体を緊張させ、血管を収縮させます。強いストレスを受けたときや、継続的なストレスを受け続けているときは、脳梗塞のリスクもぐんと高まります。
ストレスをゼロにするということは難しいかもしれません。でも、できる範囲で溜めないように心がけることが大切です。
- 適度な運動をする
- ゆっくり湯船につかる
- 好きなことを楽しむ
- 人とおしゃべりする
など、脳のためにも心のためにも、上手に発散していきましょう。
気にかけることが予防への第一歩!
若い人もかかりやすい脳梗塞の実態。少しでも気になり始めたあなたは、予防への第一歩を踏み出しています。
一度起きてしまうと命に関わる脳梗塞。生活習慣を整え、リラックスを心がけて、できるところからリスクを減らしていきましょう。
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