読んでおきたい映画が原作の小説。映画にはない楽しみ方がある
Date:2018.06.12
映画の原作小説を読んだことがある人も多いかと思いますが、「映画が原作」の小説はいかがでしょうか?
元になった映画が小説として書き起こされる「ノベライズ本」は、映画だけでは分からないような部分がたくさん補完されていて、より物語に感情移入できます。
この記事では、映画が原作のおすすめ小説をご紹介していきます。小説として好きな映画を違う視点から味わったり、見たことのない映画を小説から楽しんでみてくださいね。
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小説だけでも十分に楽しめる!邦画が原作のおすすめ小説
まずは日本人にも馴染み深い、邦画が原作の小説から見ていきましょう。
小説や漫画が映画になることが多い日本ですが、オリジナルの映画から有名になって小説になったパターンもありますよ。
『見えないほど遠くの空を』…著・榎本憲男
2011年に公開された映画のノベライズ本です。映画の監督である榎本憲男さんが直々に小説として書き、発表されました。
大学4年生の高橋は、映研の監督として『ここにいるだけ』という映画を撮影していました。ところが主演女優の莉沙が事故で亡くなり、映画は未完となります。
その1年後、高橋は街で莉沙にそっくりな女性を見つけて声をかけますが、彼女は自分を莉沙の双子の妹だと語っていて――。
物語が一転、二転していく展開は映画と同様、小説でも楽しめます。映画の監督本人が小説を書いているということもあり、原作の映画にある雰囲気を壊していません。
映画をすでに観た人には新たな気づきを与えてくれますし、映画未見の人でも映像で流れるような場面展開を楽しませてくれる小説です。
小学館文庫から発刊されています。読むときはぜひ、映画のような映像を想像しながら物語を読み進めてみてくださいね。
『ユリイカ』…著・真山真治
2001年に公開された映画『EUREKA』(ユリイカ)のノベライズ本で、こちらも監督自らが執筆した小説となっています。
映画はカンヌ国際映画祭で受賞、小説は第14回三島由紀夫賞を受賞した文句なしの名作。
九州で起きたバスジャック事件に遭遇した運転手の沢井は、心に深い傷を負います。彼は自分と同じく生き残った乗客の兄妹である中学生の直樹、小学生の梢と一緒に、心を再生する度に出かけます。
テーマは「癒し」と「再生」。217分にもわたる超大作なので、「映画としては長すぎる」と感じた人は小説で物語を追ってみてはいかがでしょうか?
映画とは違った文章特有の淡々とした展開が、読者のドキドキを煽り立ててくれます。ミステリー的な描写ももちろんですが、人間の心の闇や感情の機微が丁寧に描写されていて、読みごたえのある1冊となっています。
『あなたへ』…著・森沢明夫
高倉健さん主演の映画『あなたへ』は、2012年に公開された映画です。映画の脚本を元に書かれた小説は、絵本やエッセイ、小説など幅広い分野で活躍する作家の森沢明夫さんが執筆しています。
北陸の刑務所に勤務していた倉島は、亡くなった妻が生前に書いた1通の手紙を受け取ります。故郷の海に散骨してほしいと書かれた手紙を読み、倉島は彼女の真意を知るために彼女の故郷である九州へと向かいます…。
主人公が道中で目にする夫婦の愛や絆がしっかりと描写されていて、思わずホロリときてしまいそうな1冊。
自分の家族との生き方や、人生についての考え方…読みながら自分のことと照らし合わせて深く考えさせられます。
読者の人生の教訓になるような格言がたくさんあるため、何かに行き詰ったときにヒントとして読むのもおすすめですよ。映画にはない場面もありますから、映画を観てから補完として読んでも良いし、読んだ後で映画を観ても楽しめます。
『鍵泥棒のメソッド』…著・麻井みよこ
元になった映画は2012年に公開された、内田けんじさん監督の作品。日本アカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞したコミカルでスリリングなストーリーの魅力は、ノベライズされても健在です。
売れない役者の桜井は、銭湯で見るからに羽振りの良い男が転倒した場面に遭遇します。男は記憶喪失になり、桜井は出来心から彼のロッカーの鍵を自分のものとすり替え、男に成りすますことに。
しかし桜井が成りすましている男はなんと、伝説と噂される凄腕の殺し屋・コンドウだったのです。
映画では主要人物3人の視点が交互に繰り返されていきますが、小説ではヒロインの視点から物語が進んで行きます。
思わず吹き出してしまうコミカルなシーンや、意外な人物の意外な活躍から目が離せない、終始ワクワクさせてくれる1冊です。
どの登場人物も個性的で、生きていくことや家族を持つことに対して前向きな考えになるきっかけをくれます。
『君の名は。』…著・新海誠
流行語大賞にも輝いた2016年公開のアニメーション映画『君の名は。』のノベライズ本です。著者は監督の新海誠さん自身で、映画の本筋に関わる細かな設定や描写が補完されています。
東京に住む男子高校生・瀧は、山奥に住む女子高生・三葉と入れ替わってしまいます。ふたりは自身に起きた「入れ替わり」に対応しながら、少しずつ絆を深め、お互いに惹かれていきます。
一方、日本には1000年に1度の彗星「ティアマト彗星」が近づいているのでした――。
小説版と映画版の違いはほとんどありません。大きな違いは映像で見るか、文字で追うかという1点。
「映画を観たけれど微妙に納得できなかった点がある」という人や、「映画は観ていないけれど話題作は気になる」という人におすすめです。
監督自らが執筆していることもあり、とても分かりやすく物語の世界観が語られていますよ。
海外ならではの雰囲気!洋画が原作のおすすめ小説
次に、洋画が原作のおすすめ小説もご紹介していきます。邦画は観たことがあって新鮮味に欠ける、と感じる人や、邦画にはない洋画特有の雰囲気を小説で楽しみたい人におすすめですよ。
『アビス 上・下』…著・オースン スコット カード
1989年に公開された映画『アビス』を上下巻の小説にした2冊です。ジャンルはSFで、ちょっと頭を使うような内容。映画を観たことのある人もない人も、単なるSF小説として楽しめます。
アメリカ軍の潜水艦が正体不明の何かに襲われ、行方不明になります。そこでバッドをリーダーとする民間会社の採掘員たちが海底で捜索を行うことに。
未知の海溝「アビス」に到達すると、そこには海底深くに生活する人とは違う生命体がいたのです。
独自の表現技法が取り入れられた映画と違い、小説ではSFの基盤となる科学の設定や物語の展開が細やかにえがかれています。
古い作品のため今はあまり手に入らないのが残念ですが、古本屋さんなどで見つけた際にはぜひ読んでみてくださいね。
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』…著・デュヴィ グラム
2003年に公開された『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』のノベライズ本です。テーマは死刑制度に対する反対の意思。社会的な問題について考えさせられます。
死刑廃止運動に取り組んでいたデビッドは、共に活動していたコンスタンスに暴行を加えて殺害した疑いで死刑を宣告されます。彼は記者ビッツィーを指名し、残された3日間の間にインタビューを受けることに。そこで明らかになった事実とは――。
少しずつ情報が明かされ、真実に近づいていく様は小説ならではの楽しみ。小説として読むうちに感情移入させられ、社会的な問題に直面することで視野が広がる1冊。
とても有名な映画作品ですが、映画を観るような時間がないという人や、映画の重たい雰囲気に抵抗を感じるという人は、小説でも十分に内容を楽しめますよ。
好きなときに自分のペースで楽しめるのがノベライズの魅力
映画は素敵な娯楽の1種ですが、観るために時間をつくらなければならないのが厄介ですよね。映画がノベライズされた小説なら、自分の時間のあるときに、自分のペースで読み進められます。
小説を読むと想像力が掻き立てられ、映画とは違って自分の思うような場面展開でストーリーが進んでいきます。文章だと登場人物の心情描写が細かいため、喜びや悲しみ、葛藤といった心の動きに触れやすいのも小説ならではの魅力ですね。
映画原作の小説は、小説を先に読んでから映画を観るのも、映画を観た後で小説を読むのも楽しいですよ。映画と小説、どちらもお好きなように楽しんでみてくださいね。
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