外貨定期預金のメリットとデメリット。初心者にはハイリスク?
Date:2018.05.18
日本は空前の低金利時代。100万円を1年間定期預金に預けても、たった110円程度(税引前)の利息しか付きません。
悲しくなりますよね。テレビを見ると「日本は借金大国で、今後はインフレ必至」だとか。将来への不安は増すばかりです。
こうなったら、外貨定期預金を始めて、老後のために資産を運用しなきゃ!そう考えている方も多いのではないでしょうか?
でも、簡単に外貨定期預金を始めてはいけません!大きな損をする可能性があるからです。毎日コツコツ貯めたのに、大切なお金を減らしてしまうのは嫌ですよね。
そこで今回は、資産運用初心者の人にこそ知って欲しい、外貨預金の基本とメリット、デメリットをご紹介します。これを読んで外貨預金のリスクを知った上で、改めて資産運用について考えてみてください。
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まずは、外貨預金の基本を知ろう!
銀行で資産運用の相談をしたら「外貨定期預金」をお勧めされたけど、本当のところどうなんだろう?って思いますよね。
もちろん、上手くいけばお金が増えます!でも、その逆もあります。資産運用を考える時は、自分が許容できるリスク範囲を見極めなければいけません。そのためにも、まずは外貨預金の基本的な仕組みを知りましょう。
外貨預金って何?外貨普通預金と外貨定期預金の違い
外貨預金とは、日本円を米ドル、ユーロ、豪ドルなどの外貨に換えて預ける預金のこと。「そんなことは知ってるよ」と言われてしまいそうですが、まずは基本的なことからです。外貨預金には、日本の預金と同じように、普通預金や定期預金などがあります。外貨普通預金と外貨定期預金の主な違いは下記のとおりです。
外貨普通預金 | 外貨定期預金 | |
---|---|---|
金利 | 外貨定期預金より金利が低い | 外貨普通預金より金利が高い |
金利変動リスク | あり | なし ※固定金利のため |
途中換金 | いつでも引き出せる | 原則、満期まで解約不可 ※やむを得ない場合は中途解約できるが、 中途解約利率が適用される。 |
外貨普通預金より外貨定期預金の方が金利が高いです。外貨預金の金利は、各通貨の母国の金利水準が反映されます。例外もありますが、一般的に外貨の方が日本円より金利が高い傾向にあります。
そのため、日本の銀行に預けるより高い金利で運用することができるのは、外貨預金のメリットと言えるでしょう。
ですが、金利は市場金利の動向により変動します。したがって、外貨普通預金には金利変動リスクがあります。預け入れた時の金利より引き出す時の金利の方が低い場合、損失が生じるので注意が必要です。
また、外貨定期預金の注意点は、原則、中途解約ができないということ。金融機関によって規定は異なりますが、たとえ中途解約できたとしても、約定どおりの金利で利息を受け取ることはできません。したがって、将来の支出計画をしっかりたてることと、適切な運用期間を定めることが大切です。
預け入れ時より引き出し時に、円高になっていると損をする
外貨預金には、為替変動によるリスクもあります。外貨預金の流れは、円を外貨に換えて預け入れ、満期時等に円に換えて引き出すのが一般的です。つまり、円に換える時の為替相場によって損をしたり、得をしたりします。ここに外貨預金の大きなリスクがあるのです。では、為替相場がどのような時に損をするのでしょうか?
円高とは、外貨に対して円の価値が高くなることです。例えば、米ドルの場合「1ドル=100円」だったのが「1ドル=80円」になった時「円高ドル安になった」と言います。つまり、今までは1ドル札を貰うのに100円払っていたものが、為替相場が変わり、80円支払うだけで1ドル札を貰うことができるようになるということ。
これだけ見ると、円高はお得に感じますよね。海外で買い物をする時や国内で海外製品を輸入する時にはお得なんです。でも外貨預金では違います。円高の時に損をします。
簡単に説明すると、日本円を外貨に預け入れる時は「100円=1ドル」だったのに、引き出す時には「1ドル=80円」にしかならないということです。つまり、100円が80円になってしまい20円の為替差損が生じることになります。
これが円安の場合「100円=1ドル」で外貨に預け入れたものを「1ドル=120円」で引き出すことになり、先ほどとは逆に20円の為替差益が生じます。
外貨預金の為替相場には金融機関の手数料が上乗せされている
外貨預金で気を付けるのは「金利変動」と「為替変動」だけではありません。外貨預金を取り扱っている「金融機関の為替手数料」にも着目する必要があります。
外貨預金で適用される為替相場には2種類あります。
- TTS(Telegraphic Transfer Selling rate):円から外貨預金に預け入れる時の為替相場、金融機関が顧客に外貨を売る為替相場
- TTB(Telegraphic Transfer Buying rate):外貨預金から円で引き出す時の為替相場、銀行が顧客から外貨を買う為替相場
各金融機関では、その日の為替の基準となる「仲値」を決めており、TTSとTTBはどちらも「仲根」を基準にして、為替手数料が上乗せされます。
円から外貨預金に預け入れる時は、仲値に手数料を足したTTSレートで預け入れ、外貨を円に交換するときは仲値から手数料を引いたTTBレートで引き出すことになります。預け入れる時も引き出す時も、金融機関に為替手数料を支払うということです。
通常、TTSよりTTBは円高に設定されているため、たとえ預け入れ時と引き出し時の為替相場(仲値)に変動がなくても、TTSとTTBの差の分だけ元本割れを起こし損をするので注意しましょう。
また金融機関や通貨ごとに、TTSとTTBは異なります。一般的に、取引量や取引参加人数の少ないマイナー通貨ほど手数料が高くなるとされています。
外貨預金は、カントリーリスクにも気を付けて!
外貨には、米ドルやユーロ、豪ドルのほか、ニュージーランドドルや英ポンド、スイスフラン、カナダドル、香港ドル、シンガポールドル、中国人民元、トルコリラ、ブラジルレアルなど数多くの通貨があります。各国によって経済状況も政治状況も様々で、通貨の価値は国の情勢により大きな影響を受けます。
そこで、外貨預金のリスクとして、もう一つ注意したいのは「カントリーリスク」です。これは外貨預金だけでなく、外貨建ての金融商品に投資をする場合も同じく注意する必要があります。
カントリーリスクとは投資対象の国の信用リスクのことで、政治的、経済的、社会的な安定度などが判断基準とされています。一般的に、政治的に不安定な国ほどカントリーリスクは高いと言われ、先進国よりは発展途上国の方がリスクが高いとされています。このカントリーリスクは、格付け会社が公表している格付けで判断することができます。
外貨預金はペイオフ対象外!銀行が倒産したらどうなるの?
「ペイオフ」って聞いたことありませんか?これは「預金保護制度」のことです。
- 預金保護制度:預金保険機構が預金保険法に基づいて運営する制度。
- 保護範囲:対象の金融商品であれば、万が一、金融機関が破綻したとしても、1金融機関につき預金者1人当たり「元本1,000万円までと破綻日までの利息等」が保護される。
- 対象の金融商品:利息のつく普通預金、定期預金、定期積金、元本補てん契約のある金銭信託、金融債(保護預り専用商品に限る)等。
外貨預金はこの預金保護制度の対象外なのです。したがって、金融機関が破綻すると、補償される額は金融機関の財産状況により、預金の一部がカットされてしまう場合があります。
外貨預金の6つのリスクに注意しよう!
ここまで外貨預金の基礎をご説明しましたが、まとめると下記のとおりです。注意すべき点は、主に6つあります。ただし、1つ目は外貨普通預金の場合のみ、6つ目は外貨定期預金の場合のみ気を付けてください。
金利変動リスク | 外貨普通預金の場合、金利の動向により、資産価値が変動する |
---|---|
為替変動リスク | 日本円と外貨の為替の動向により資産価値が変動する |
為替手数料のリスク | 外貨預金取引には為替手数料がかかる。 |
カントリーリスク | 投資対象の国の情勢により市場が変化し、資産価値が変動する |
ペイオフ対象外のリスク | ペイオフ(預金保護機構)の対象外のため、 万が一金融機関が倒産しても補償されない |
中途換金不可のリスク | 外貨定期預金の場合、原則、中途換金不可。 やむを得ず中途換金すると損をすることも。 |
リスクへ備えることはできないの?リスク管理の6つの方法
ここまで外貨預金のリスクばかりを話してきましたが、これらのリスクを踏まえて「それでも外貨預金をやってみたい!」という方に、リスク管理について簡単にご説明します。
ただし、いくらリスク管理をしたとしても、リスクをゼロにすることは不可能です。自己責任で投資をするということを忘れず、慎重に選択しましょう。
リスク管理1:投資する通貨を分散する
一つの国の通貨にまとめて投資した場合、カントリーリスクはもちろん、為替変動や金利変動のリスクはすべて一つの通貨に集約されます。したがって、その通貨の金利が下がったり、円高になると、大きな損失を受けることになるのです。
ところが、為替や金利の動向が異なる複数の通貨に分散して投資すると、一つの通貨の状況が悪くなったとしても、先ほどのように一つの通貨にまとめて投資した時と比べ、資産全体の損失を小さく抑えることができます。
リスク管理2:預け入れる時期を分散する
通貨だけでなく、外貨に預け入れる時期を分散することも、投資におけるリスク管理として効果があると考えられています。
外貨預金では一番円高の時に預け入れることが理想ですが、様々な要因によって変動する為替相場を見極めるのは至難の業です。投資のプロでも不可能でしょう。
ただ、その為替変動リスクを少しでも抑えるために、一度にまとめて預けず何回かに分けて預け入れるのです。預け入れる時期を分けることで、為替変動リスクを抑えることが期待できます。
リスク管理3:余裕のある資金で投資する
外貨預金はリスクのある投資です。利益が出ることもあれば、逆に損失が出ることもあります。引き出す時期や為替相場等によって、元本割れの可能性もあります。
また「外貨定期預金は中途解約できない」こともお伝えしましたが、すぐにでも必要なお金を外貨預金に預けてしまうと、大きな損失を出してしまうことがあります。リスクをできるだけ回避するためにも、当面使う予定がない余裕のある資金で行いましょう。
リスク管理4:外貨をそのまま使う
円高の場合、預けていた外貨預金を日本円に換えてしまうと為替差損が生じてしまいます。ですが、外貨をそのまま使えば為替差損を被ることはありません。
ただし、すべての外貨預金商品で外貨をそのまま引き出せるわけではありません。金融機関や外貨の種類により規定が異なります。引き出し手数料など手続きにより手数料がかかることもあります。よく調べた上で預金先を決めましょう。
リスク管理5:毎日、為替相場をチェックする
ニュースや新聞等で情報を収集したり、金利や為替の動きをチェックすることはとても大切です。日々の動向をチェックすることで、少しずつ相場観を養うことができるはずです。
各通貨の特徴をつかみ、預け入れや引き出しの時期を見極めるため、ぜひ毎日の為替相場を気にしてみてください。
資産運用初心者の方に、外貨預金はおすすめしません!
今回、外貨定期預金についてお話しましたが、最後に外貨定期預金のメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
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メリットよりもデメリットの方が多いですね。数多くの投資家や経済評論家も「外貨定期預金で利益を出し続けるのは難しい」と言っています。ましてや為替動向を読むことに慣れない初心者にとって、外貨定期預金はリスクが高いのではないでしょうか。
もちろんメリットが全くないわけではありませんので、メリットとデメリットをご自分の天秤にかけて、大切なお金の運用方法を考えましょう。
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