漢方薬は体質改善で症状を和らげる。その効果や魅力、注意点は?
体調管理をしたり、あらゆる身体の悩みを改善する漢方薬。誰でも一度は使ったことがあるのではないでしょうか?
漢方薬は副作用が少ないことやPMS(月経前症候群)、自律神経失調症などの心からくる不調の解決策として知られています。市販の漢方薬の種類も増えていて、今では多くの人に馴染みがある存在ですよね。
ここでは、漢方とはどのような存在なのか?漢方はどのように利用するべきかについてご説明していきますね。
漢方薬ってどんな薬?西洋薬との違いや効果のあらわれ方
漢方薬は東洋医学から伝わる薬で、普段病院や薬局などで処方されることの多い西洋薬とは全く別の物です。
漢方では、
- 気(き)
- 血(けつ)
- 水(すい)
の3つから人の身体が構成されていると考えられています。この3つのバランスを整えながら症状を緩和するのが、漢方薬の役割。
まずは漢方薬がどのように身体に働きかけるのか、どのような立ち位置にいるのかについて見ていきましょう。
漢方薬と西洋薬の違い
西洋薬は成分を科学的に合成したものですが、漢方薬は天然の植物や鉱物を調合したものです。西洋薬がピンポイントで症状の原因に働きかけるのに対して、漢方薬は身体に本来備わっている自然治癒力で症状に働きかけるのです。
これに対して漢方薬は、風邪を引いた際には免疫力や殺菌・抗菌力を上げる作用を持った薬を調合します。薬が直接ウイルスを撲滅するのではなくて、薬によって力を引き上げられた身体が自身でウイルスを撲滅する、というイメージです。
ですから漢方薬は西洋薬と比べて、
- 効き目があらわれるのが比較的ゆっくり
- 薬の力ではなく、薬で引き出された自分の治癒力で治す
- 効き目が穏やかなため、副作用が少ない
- 身体のパーツごとではなく、身体全体に対して働きかける
といった特徴があります。
漢方薬はいわば、「自分で症状を治すサポートをする存在」と言えますね。
漢方薬が効果を発揮する症状
漢方薬を使って緩和するのに向いているのは、
- 慢性的な症状(頭痛や疲労感、吐き気など…)
- 具体的な原因がわかりづらい症状(生活習慣病や体質、夏バテなど…)
- 原因が複雑なもの(更年期障害や生理痛・PMS、冷え性など…)
といった症状です。
具体的な原因がこれと言って特定できず、身体全体で見たときに不調があるような場合に漢方薬は効果を発揮します。
漢方薬は、身体が本来持っている力を引き出すためのものです。例えば冷え性の緩和なら西洋薬よりも、身体の発汗・発熱作用を促して体温を上げるような効果を持つ漢方薬がすすめられます。
身体機能を底上げして、体質を改善しながら症状を快方に導くのが漢方薬の働きなのです。
ダイエットや冷え性改善など…漢方薬が使われる症状や場面
漢方薬は、改善したい症状や得たい効果によって選びます。漢方薬がよく使われるのは、具体的には次のような場面です。
女性ホルモンによる症状の緩和
女性ホルモンの働きは、女性にとって身体の健康状態を左右する大切な存在です。女性ホルモンの分泌バランスが乱れることで、
- 自律神経の乱れ
- 肌の乾燥
- 生理不順や周期遅れ
- 精神的なイライラや不安感
…といった様々な症状があらわれます。
漢方薬には、女性ホルモンの乱れからくる諸症状を緩和するものがいくつかあります。
ホルモンバランスの乱れがどのような症状を与えているのかによって、漢方薬を使い分けましょう。
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン)
- 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
- 温経湯(ウンケイトウ)
自分の抱えている症状と照らし合わせながら、効きそうな漢方薬を選んでみてくださいね。
ダイエットをサポートする
漢方薬がダイエットに向いているのは知っていましたか?漢方薬は、服用する本人の体質や自然治癒力に働きかけて症状を良くするものです。
漢方薬の中には、基礎代謝を高めて脂肪を燃焼したり、ストレスによる食べ過ぎを防止したりするものがあります。まさにダイエットの味方ですね!
ダイエットに向いた漢方薬には、他にも
- 血流を促進して冷えを解消する
- 水分を流してむくみを改善する
- 便秘を解消する
- 自律神経を整える
…などの作用を持ったものもあります。
ダイエットが続かない、続いても後でリバウンドしてしまう…という人は、漢方薬の力を借りながらダイエットに挑戦してみると良いですね。
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 大柴胡湯(だいさいことう)
- 防風痛聖散(ぼうふうつうしょうさん)
身体の内側に働きかけて冷え性を改善
体質を改善する効果に優れている漢方薬にとって、冷えの改善は得意分野といっても良いほど。
漢方薬は血液の流れや胃腸の働き、自律神経などに働きかけて、体温を上げながら冷え性を改善する効果があります。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 温経湯(うんけいとう)
- 安中散(あんちゅうさん)
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
- 真武湯(しんぶとう)
…などが例ですね。
冷え性を改善する漢方薬はたくさんあります。自分がどんな原因で冷え性になっているのかを考えながら、薬剤師さんや医療機関と相談して漢方薬を選んでみてくださいね。
体質・肌質を改善して美肌になる
例えば乾燥肌の人やオイリー肌の人など…肌が荒れてしまうのには、人によって様々な理由がありますよね。「こればかりは体質だから」と諦めていませんか?
漢方薬は本人の体質を改善する作用を持つ薬です。血流を改善して肌の栄養不足を防いだり、女性ホルモンの分泌バランスを整えて肌の乾燥or脂っぽさを改善してくれます。
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
などの漢方薬が、よく肌質を改善して美肌に導く薬として紹介されていますね。
漢方薬は「今すぐに肌トラブルを改善する」というものではありません。ですがゆっくり体質や肌質を改善していくからこそ、その場しのぎではない美肌効果が期待できるのです。
胃腸や汗に働いて体臭改善
人には言えないけれど体臭に悩みを持っている…そんな女性は今も昔も多くいます。体臭の原因は、
- 肌荒れ
- 体調不良
- 内臓器官の働きの低下
といった様々なものが考えられます。
体臭の改善や予防には、身体の内側に働きかけて体調を整える漢方薬の考え方が適しています。
- 黄連湯(オウレントウ)
- 防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)
などの漢方薬が、胃腸や汗に働きかけて体臭を改善してくれます。
更年期障害の症状を緩和する
更年期障害は、更年期の女性の身体に起こる不調のことを言います。症状や現れ方は人それぞれですから、一概にこれと言える定義がありません。そのため特効薬がないのです。
加齢によって女性ホルモンの分泌が減っていくのが、更年期障害の原因です。ホルモンバランスの乱れからくる身体の不調は、漢方薬で緩和することができます。
例えば
- 著しい身体の火照りor冷え
- 精神的なイライラや不安感
- 便秘や便秘による腹痛
- 肩こりや腰痛
…など。
漢方薬は血行不良を改善して体温調節を手助けしたり、自律神経を整えて精神的な不調を和らげることができます。明確な原因がない更年期障害は、西洋薬よりも漢方薬の方がより効果を示してくれます。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 温経湯(うんけいとう)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 女神散(にょしんさん)
などの漢方薬が、よく更年期障害に悩む人に処方されています。
更年期障害は人それぞれで症状も度合も違いますから、まずはしっかり薬剤師さんや専門家に相談してくださいね。
入手方法や選び方など…漢方薬を使うときの注意点
人の身体に寄り添ってじわりじわりと体調を改善していく漢方薬。西洋薬とはまた違った魅力がありますよね。
そんな漢方薬ですが、やはり”ちゃんと効くもの”を選ばないと買い損です。漢方薬の選び方や、漢方の服用にあたって注意したいポイントについていくつかご紹介しますね。
市販の漢方と処方された漢方の違い
漢方薬を手に入れる方法は、
- 病院や薬剤師に処方してもらう(医療用漢方薬)
- 市販で売られているものを買う(一般用漢方薬)
の2つがあります。
処方されて入手する医療用漢方薬と比べて、市販の一般用漢方薬の方が効果が薄い傾向にあります。
そうしたミスマッチの副作用を減らすために、市販の漢方薬は副作用が出にくいような作りになっています。副作用が軽いということは、効果も薄いということ。
医療用漢方薬はいちいち処方箋を貰う必要がありますから、手に入れるのを面倒に感じてしまう人もいます。ですが処方箋を貰って手に入れる漢方薬は、”専門家が直接選んでくれた”という点から副作用のリスクが低いため、効き目も強いのです。
医療機関を訪ねる時間がなければ市販の漢方薬でも構いませんが、本当に効果を得たいのなら医療用漢方薬の方がおすすめです。医療用漢方薬であれば、健康保険が適用されてお得になるケースもありますよ。
病名ではなく症状を基準に選ぶ
どうしてもセルフで漢方薬を選びたいという人は、病名や原因よりも症状に注目です。
漢方薬は治癒力や体質にアプローチして、対象となる症状を緩和します。直接的に原因を撲滅するものではありませんから、「頭痛がする」や「吐き気がある」のような治したい症状を基準に選んでください。
- イライラや不安感などの症状…加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 便秘や月経不順などの症状…桃核承気湯(とうがくじょうきとう)
- 頭痛やむくみなどの症状…五苓散(ゴレイサン)
のように、症状によって選ぶべき漢方薬は違うのです。
症状は胃痛や吐き気のように身体の内側にあらわれるものと、肌荒れやむくみのように身体の外側にあらわれるものがあります。どこにどんな症状があるのかを考えながら、自分によく効く漢方薬を選んでみてくださいね。
漢方薬にも副作用はある
副作用が少ないことに定評のある漢方薬ですが、もちろん副作用が「全くない」とは言い切れません。
漢方薬の種類にもよりますが、体質や薬と症状のミスマッチによっては
- 発汗、発熱
- 動悸
- のぼせ
- 発疹、かゆみ
- 吐き気
- 胃もたれ
のような副作用があらわれる可能性もあります。
漢方薬を選ぶときは、よく注意して本人の抱えている症状や薬の効果を照らし合わせてください。最も安全なのは、やはり医療機関や薬剤師さんに直接処方してもらうことですね。
漢方薬と西洋薬、どちらを選ぶかは専門家に相談しよう
副作用が少なく本人の治癒力を引き出す漢方薬は、ちょっと特有の味がありますが効果は優れています。
特に冷え性や自律神経の乱れなど、漠然とした症状を抱えている現代人から多くの支持を得ています。
ですが漢方薬の方が効果が見られる症状があるように、西洋薬の方が効果が見られる症状もあります。漢方薬と西洋薬はどちらも一長一短ですから、どちらの方が効くかは、本人の抱えている悩みや症状によって様々。
漢方薬は確かに優れた効能を持っていますが、漢方薬にばかり頼ろうとせず、まずは自分の解消したい悩みや症状について専門家と相談するのが大切ですね。