パートで働く時に知っておきたい税金のこと。いくらまでならOK?
Date:2018.02.22
子育てが少し落ち着いてきたら、パートに出て少しでも家計の足しにしたい、と思っているママも多いのではないでしょうか。
夫がサラリーマンの場合は、妻が扶養家族になっていることが多いでしょう。しかし、働き始めると収入の額によっては扶養家族から外れてしまうことがあります。
いくらまでなら扶養控除内でおさまるのか、税金は収入がいくらからかかるのかなど、働く時間を決める前に知っておいて欲しいことがあります。
扶養控除内で働くために知っておきたい年収の額
扶養控除内で働くには、収入はいくらまでならいいのかということについて説明します。以下、収入という言葉はすべて「年収」を指すものとします。
最初に金額をいっておくと、
- 98万円=非課税
- 100万円=住民税の壁
- 103万円=所得税の壁
- 106万円=新たな社会保険の基準
- 130万円=これまでの社会保険の基準
- 150万円=新たな所得税の基準
となります。
ここで大事なのは、所得税と住民税、社会保険とそれぞれ基準が違うということです。
よく「○○円の壁」といわれますが、それぞれ何の壁かが違うので、それを理解した上で収入を考える必要があるでしょう。
98万円未満なら非課税
収入が98万円未満であれば、税金などの支払義務はありません。働いて得た収入がそのまま受け取れると考えてください。
非課税なのは979,999円までですから、98万円になると住民税の均等割が発生することがあります。
ただし均等割の基準は自治体によって違うので、非課税になる場合もあります。
東京23区に住んでいる人のお給料が100万円の場合、
- 給与所得控除 65万円
- 自治体の定める額 ※東京23区の場合、扶養なしで35万円
合計100万円なので、住民税の均等割、所得割ともに非課税となります。
ちなみに均等割の額がどのくらいかというと、
- 市町村税 3500円
- 都道府県税 1500円
の合計5,000円です。
※平成26年~35年までの標準税率
100万円から5千円を引いても98万円よりは手取りが多くなるのですから、この辺りはあまりこだわる必要はないでしょう。
100万円を超えた場合は住民税
年収が100万円を超えると、住民税の均等割だけでなく、所得割もかかるようになります。所得が多いほど所得割の金額も大きくなります。
均等割は全国の自治体でほぼ同額ですが、所得割は計算する際の税率が自治体によって違うので、自分の住んでいる自治体なら、どのくらいの税率か調べてみるといいでしょう。
103万円からは自分の収入に所得税がかかる
所得税は、
- 給与所得控除 65万円(最低額)
- 基礎控除 38万円
を収入から引き、その額に税率をかけます。
この金額は誰でも給料から差し引くことの額なので、収入が103万円以内なら所得税が非課税になるということです。
日本は累進課税制度といって収入が増えるほど税率も高くなるようになっています。
最も低い税率は5%ですから、控除して残った額にこの税率をかけて税金を算出します。
生命保険など他に控除できるものもありますが、所得のみでざっくり計算した場合、
- 103万円=非課税
- 105万円=2万円分に課税(税率5%で1000円)
ということになります。
収入が105万円ですと住民税もかかってくるので、103万円と大して変わらなくなってしまうかもしれません。
所得税、住民税を差し引いてもプラスにしようと思うなら、110万円くらいの収入があった方がいいですね。
配偶者控除は103万円から150万円に
103万円の壁といわれていたのにはもう一つ理由があります。
それは「配偶者控除」です。
103万円までは所得税もかかりませんし、夫の給与も配偶者控除の38万円があったので、その分税金が抑えられるということ。
それでパートに出る人は「103万円」を意識していたんですね。
しかし2018年1月からは、その基準が103万円から150万円に拡大されました。
ですから、自分の所得税は引かれても、配偶者控除はまだまだ大丈夫ということですね。
これに伴い、配偶者特別控除の対象額も変わってきます。これまでは141万円未満でしたが、これからは150万円~201万円までなら配偶者特別控除が受けられます。
130万円を超えると社会保険料を払う
130万円の壁もよく聞く言葉だと思いますが、これは「社会保険」に関する壁です。
しかし、130万円を超えれば、
- 国民年金
- 国民健康保険
- 介護保険
などの支払義務が生じます。
また、パート先が一定の条件を満たしていると、
- 厚生年金
- 健康保険
といった社会保険が給与から差し引かれることになります。それについては、次の項目でお話しします。
つまり、130万円を超えたら、諸々かかる税金や保険料をすべて自分で払う必要があるということです。
新たな社会保険の壁、106万円
2016年10月の法律改正により、パートであっても一定の条件を満たしている場合は社会保険が適用されることになりました。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 給与所得(残業代、交通費は含まない)が8万8千円以上である
- 勤続1年以上の見込みがある
- 従業員が501人以上の企業である
- 従業員が500人以下の場合は社会保険に関しての労使合意がある
- 学生ではない
という条件を満たした場合、パートであっても社会保険が適用されることになりました。
ですから、人によっては130万円の壁が106万円の壁になるということです。
201万円以上は完全な自立
配偶者控除、配偶者特別控除もなく、住民税、所得税もかかってくる収入額が201万円ということになります。
このくらいの金額を稼ぐようになると完全な自立ということになりますね。
これまで受けてきた控除などを考えると、201万円ギリギリくらいの収入だとかえって手取りが減る可能性もあります。
それならば、201万円未満におさえるか、頑張ってもっとたくさん稼ぐか考えた方がいいでしょう。
ただし、配偶者の給料にも注目
そもそも配偶者のお給料がものすごく高い場合は配偶者特別控除が受けられません。
夫の給料 | 控除額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900~950万円以下 | 26万円 |
950~1000万円以下 | 13万円 |
1000万円を超えたら配偶者控除の適用除外です。
ギリギリの額だと損をすることも
色々な額の「壁」がありましたが、あまりにその額を意識しすぎてギリギリ超えてしまった場合などは、かえって損をすることもあるでしょう。
ですから、全く何も支払いたくないという場合は、パートの収入がお小遣い程度になるような仕事の量に留めておいた方がいいかもしれません。
税金を取られても収入が増えるならいいという考え方もある
ただ、あまり「引かれる」ということばかりにフォーカスするのはどうでしょう。
税金や保険料を払うことは本来国民の義務ですし、所得が増えればその分自分で使える自由なお金も増えるわけですからマイナスなことばかりではないと思います。
世帯年収で考えよう
自分の収入ばかりに目がいきがちですが、収入は家族みんなのものですよね。
そこで、世帯年収としてプラスになるのはどのくらいの収入なのか、ということを考えてみるといいと思います。
壁の額にプラス20~30万円くらいを目指す
これらの収入の壁を超えて、実質的なプラスが出るのはプラス20~30万円くらいの額でしょう。
所得税や社会保険料など、年間で増える支出が20万円くらいだとすると、それ以上稼げばその壁を意識していた頃よりも手取りは増えるわけです。
年金が増えるなどプラスの面も
社会保険料を払いたくないという女性も多いのですが、長い目で見て将来得するということを考えてみてください。
一般的に男性よりも女性の方が長生きですよね。リタイアした後の長い老後生活が待っています。
パートで扶養内で働いている場合、年金は国民年金に加入し、第3号被保険者になっています。
厚生年金に加入していれば、報酬に応じた上乗せ部分がもらえます。老後の生活はずっと楽になりますよ。
また、雇用保険や健康保険に加入することで、病気になった時や出産などの出来ごとに関わる手当を受給することも出来ます。
保険料を支払うことは損することばかりではありません。
これからは女性にも経済力が必要
夫がいつまでいるかはわかりません。明日のことなど、誰にも分からないですよね。
事故にあったり病気になるかもしれない。悲しいけれど、夫婦の気持ちがすれ違ってうまくやっていけなくなるかもしれない。
どんなに妻が努力しても、仕方のないことというのは起きるものです。
その時に、キレイさっぱり再スタート!と、自分の人生に踏み出せない原因の一つに、女性の経済力のなさがあります。
しかし、あまりに「壁」ばかり意識して収入を抑えておくと、いざという時に対応できないのではないでしょうか。
日本ではまだまだ「パート」という働き方の地位が低く、どこへ行っても二流扱いです。それでは経済的に独り立ちできません。
今はパートだとしても、将来的にもっと収入を増やしていくような働き方を、これからの女性は考えていく必要があると思います。
自分にあった働き方を見つけよう
そうはいっても、人の家庭の状況は様々。働き方や子育てに関する考え方も人それぞれです。
どれがいい、悪いという問題ではないので、自分が納得できる働き方を模索してください。
働くということは生き方の問題です。収入が増えればいいというものでもないですが、やはりやったことに対する正当な評価は欲しいもの。
収入の壁だけでなく、どんな働き方が自分にあっているのか、ということも合わせて考えてみて欲しいと思います。
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