ピルは女性の強い味方!メリットとデメリットを理解しよう
Date:2016.05.19
自分の身体を守るためにもピルを使ってみたいと思っている女性は少なくないと思いますが、副作用も気になります。
そもそもどのような効果があるのか、どのように使えば良いのかということがあまり知られていないですね。
日本ではピルを飲むということが一般化していないので、漠然と不安感を持っている方もいるでしょう。
ピルは使う上でのメリットとデメリットをしっかり理解すれば、安心して使うことの出来る薬です。
避妊だけでなく、女性の体にとってどのようなメリットがあるのかをわかりやすく解説します。
正しい知識を持っていない人多数!ピルとはどのような薬なのか詳しく知りたい!
ピルというと「経口避妊薬」という名前から「避妊」だけが目的の薬だと思われがちですが、それ以外にも女性の体にとって様々なメリットがあります。
月経の不調があったりホルモンバランスの乱れによる肌荒れなど、女性特有の症状はピルで改善できる可能性があります。
まずは女性ホルモンについておさらい!
女性ホルモンとは、
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
- プロゲステロン(黄体ホルモン)
のことをいい、排卵するためにエストロゲンが、妊娠を維持するためにプロゲステロンが分泌されます。
エストロゲンが分泌されることにより子宮内膜が厚くなっていき、妊娠の準備をします。卵胞が成熟していき排卵されます。
この卵が受精して子宮内膜に着床すると「妊娠した」ということになるわでですね。そしてプロゲステロンが分泌されて、妊娠を維持しようとします。
ところが排卵後に受精→着床していない場合には、受精卵のためのベッドは必要なくなるので、子宮の内膜がだんだんはがれて経血として外に出ていきます。これが月経ですね。
およそですが、
- 排卵までの卵胞期が14日間
- 排卵から月経までの黄体期が14日間
で28日の周期で月経が繰り返されていくのです。
ピルは女性ホルモンを調整して排卵を抑制する薬
なぜピルを飲むと月経周期をずらすことが出来るのでしょうか。
ピルは卵巣で作られているホルモンとほぼ同じ構造をしているので、ピルを飲むことによって「ホルモンが分泌された=妊娠した」と脳が勘違いするわけです。
そうすると、すでに必要なホルモンは分泌されているわけですから
↓
排卵は起きない
↓
生理が来ない
という仕組みです。
ホルモンの成分によって飲む数が違う
1周期中のホルモン量の変化による分け方があります。
- ◆1相性ピル
- 21錠タイプで、すべて成分が同じもので、毎日決まった時間に1錠ずつ21日間毎日飲みます。飲み間違いが少ないので生理日を調整するためによく使われます。
- マーベロン
- オーソM
など。
- ◆3相性ピル
- ホルモンバランスがより自然な形になるように、3段階で変化していくタイプなので、総ホルモン量が少なくてすむというメリットがあります。
28錠で1シートになっています。薬としては21錠分なのですが、7錠の偽薬(有効成分のない錠剤)が含まれています。
- オーソ777
- トライディオール
- トリキュラー
- リビアン
- アンジュ
- ノリニール
- シンフェーズ
など。
ホルモンの量による分類もある
ホルモンの量の違いは、
- 避妊をしたいのか
- 単に生理の周期をずらしたいのか
によって処方するものが変わってくるようです。
- 低用量ピル
- エストロゲン(卵胞ホルモン)の量が50μg未満で30~40μgのものが多いです。1999年に認可され、現在の経口避妊薬の主流となっています。
シート単位の処方になるので、21錠もしくは28錠単位でもらうことになります。
- 中用量ピル
- エストロゲンの量が50μgのもの。一昔前まではこれが普及していました。医師にもよりますが、必要量のみの処方が多いようです。
- 高用量ピル
- 中用量ピルよりもさらにエストロゲンを必要な場合に処方されるもの。エストロゲンの量は50μg以上です。
日本はピル後進国…海外ではすでに女性の常識
日本では、正しい情報が浸透しておらず、確たる根拠もなくピルに対するマイナスイメージの方が強いようです。
- 太る
- 副作用が怖い
普及率が40%を超える国もあるのに、日本ではまだ1~3%といわれています。
ピルに限らずどのような薬であっても、たとえ風邪薬でも医師の指示に従わずに間違った服用をすれば副作用の危険はありますし、意図した効果がでないこともあります。
ピルも同じことで、ホルモンを調節するわけですから医師の指示通りに飲むことが大切。
事前によく話し合って、体質的に飲んでも問題ないと判断されればいたずらに不安を感じる必要はありません。
きちんと効果を出すための正しいピルの飲み方を知ろう
ピルはいったん服用を始めたら、最後まで毎日同じ時間に飲むことが大切です。
何時に飲まなくてはいけない、ということはありませんので食前でも食後でも良いのですが、飲む時間は決めて下さい。
お休み期間がある21錠タイプの飲み方
21錠でひとつのシートになっていて、毎日同じ時間に1錠飲みます。
これを21日間続けて次の7日間はお休みします。この数日の間に月経が起こるようになっていて、7日後にまた次のシートを飲み始めます。
飲み忘れがない28錠タイプの飲み方
薬効成分が入っているのは21錠タイプと同じ、最初の3週間分なのです。
残りの7錠は偽薬(プラシーボ)といって、飲み忘れを防ぐために毎日飲むようになっているのです。
1シート終わったら次のシートを飲むので、間のお休みはありません。
ピルは飲み忘れないことが大切!
毎日決まった時間に飲まなくては効果も半減ですが、万が一飲み忘れてしまったら、どうすれば良いでしょうか。
- 飲み忘れて24時間以内
- 気づいた時点で忘れた分を飲みましょう。そしてその日の分は通常通りに飲みます。
- 飲み忘れて24時間以上経過
- 処方してもらったピルの服用をいったん中止します。医師に相談の上、新しいピルのシートを処方してもらうことになります。
ピルの避妊効果はかなり高い
排卵の周期をずらすことにより妊娠をコントロールできるピルですが、避妊効果はどれほどなのでしょうか。
1年間の避妊失敗率を見てみると以下のようなデータがあります。
コンドーム | 2~18% |
---|---|
ピル | 0.3~9% |
タイミング法 | 0.4~24% |
避妊手術 | 0.5% |
このデータを見ても、ピルの避妊率はかなり高いことがわかります。
ピルの服用をやめれば、もちろん妊娠することも可能です。通常は、服用をやめて1~2ヶ月すれば排卵が始まります。
また、それまで飲んでいたピルの成分が体に残っていて妊娠に影響するということもないので、将来妊娠を考えている方も安心して飲めるでしょう。
ピルは実は避妊以外にも女性にメリットのある薬!
ピルの効果は避妊だけではありません。
卵巣や子宮に関するトラブルは女性特有のものですよね。ピルを服用することによって、それらのトラブルを防ぐことが出来るとされています。
月経周期の調整からニキビの改善まで女性に嬉しい効果がたくさん!
生理不順を改善し周期が規則正しくなる
月経不順に悩む方はピルを飲み始めるとホルモンバランスを整えることが出来るので、毎月同じ時期に生理が来るようになります。
月経周期を調整して生理開始日をずらすことができる
旅行や出張の予定があって、どうしてもその日は生理がきてほしくない。そんなときにもピルは役に立ちます。
- 生理を早めたい時
- 生理開始1日目~5日目までの間に飲み始めます。低用量ピルか中用量ピルかで飲み始める時期は違いますが、生理が来て欲しい日の2日ほど前に服用をやめると生理が始まるとされています。
ただし、その前からピルを服用していることが条件なので、いきなり生理開始日をずらせるわけではありません。
- 生理を遅らせる場合
- 生理予定日の5~7日前から遅らせたい日まで飲み続けます。同じく服用をやめて2日後くらいに生理が始まりますが、これも事前のピル服用が必要です。
子宮内膜を厚くしないので生理痛を緩和できる
生理痛の原因は様々ですが、子宮内膜の厚さが関係していると考えられています。
厚くなった子宮内膜がはがれる時に痛みが出やすくなるので、ピルで子宮内膜を厚くしないということは生理痛も和らげながら出血量を減らすことも可能です。
- 月経過多
- 月経困難症
でお悩みの方は一度婦人科に相談してみると良いでしょう。
女性特有のガンの発症を防ぐ
女性は子宮と卵巣を持っていることから、女性特有のがんというものがあります。
- 卵巣がん
- 子宮体がん
- 乳がん
卵巣がんは、排卵のたびに卵巣が傷つくことにより起こりやすくなると考えられているので、排卵を抑制することは卵巣へのダメージを防ぐことになり、卵巣がんの予防につながるとされています。
また、子宮に関するがんは、女性ホルモンのバランスが乱れることにより発症しやすくなるといわれています。
婦人科系のがんは自覚症状がほぼなく、定期的に検診を受けていないと早期発見が難しいがんです。
ピルを飲むことで予防できたらとてもありがたいですね。
子宮内膜症の予防と改善に役立つ
子宮内膜症の進行を止めるためには子宮内膜が出来ないようにする=月経を止める、という方法が有効な手段とされています。
子宮内膜症は重症化すると
- 不妊症の原因となる
- 外科手術が必要な場合がある
出血の痛みも尋常ではないため、日常生活に支障をきたすこともあります。ホルモンバランスが乱れやすい方はピルを上手に使って防ぎたい病気です。
ホルモンバランスを整えてニキビ予防
ニキビが出来やすくなる原因のひとつにホルモンバランスの乱れがあります。生理前になるとニキビが出来て困る!という方も少なくないのでは…
毛深いことが悩みの方にも
多毛症とまではいかないまでも毛深くて悩んでいる方にもピルのメリットがあります。
ピルで女性ホルモンが増えることにより男性ホルモンが減るので体毛が薄くなる、ということもあります。
メリットだけじゃない!ピルのデメリットもしっかり理解しておこう
反対に、ピルを服用することで他の病気のリスクが高まる可能性もわずかですがあります。
ピルの服用はそのリスクも納得した上ですすめていく必要があるのです。
タバコを吸っていると血栓症のリスクがある
血管の中に血液の固まりが出来る病気を血栓症といいますが、血栓は本来傷口を塞いで止血する役割のあるものです。
ただ血液がサラサラでないと、血栓が溶けずに血管の中で詰まってしまうことがあるため、心筋梗塞などの循環器系の病気を引き起こす原因になります。
子宮頸がんのリスクが高まる可能性もある
子宮頸がんはホルモン依存性のがんである子宮体がんと違い、「ヒトパピローマウィルス」というウィルスが原因のがんです。
性交渉によって感染するため、性交渉の回数が多い方や出産回数が多い方の発症率が高いとされています。
その他にも子宮頸がんになりやすいとされる因子があり、それらとともに発癌リスクの高いHPVに感染している場合は、頸がんの発症率が高くなると言われています。
子宮頸がんになりやすい因子としては、
…中略…
(6)経口避妊薬(ピル)の長期服用者
(7)免疫系の低下
などがあります。
長期間ピルを服用するのであれば、必ず子宮頸がん検査を受けましょう。
避妊はできても性感染症は防げない
避妊の効果はほぼ100%といえるピルですが、性感染症を防ぐ力はありません。
性交渉の際はコンドームを使用することが大切です。
産婦人科を受診しなければならない
風邪薬と違い、ピルは医師の処方箋がなければ使うことは出来ません。
病気の治療で勧められる以外には、使う目的によっては医師としっかり相談し納得した上で使う必要があります。
でも、忙しいと病院へ行く時間も取りづらいですよね。また、婦人科というと内診が嫌だと思う方も多いでしょう。
ピルにかかる費用は保険適用されない
病気の治療に必要と判断されないとピルの処方に保険は適用されません。
ただし、診察を受ける時はどのような診断になるかわからないので、病院にかかるときには必ず保険証を持っていきましょう。
- 初診料
- 薬剤料
- 処方料
- 診察料
などで、だいたい3000円~5000円前後かかるのが一般的なようですが、心配ならば事前に確認しておくと安心です。
生理痛が酷い女性はピルを試してみては?生理痛が緩和される効果が高い!
10代で月経が始まってから閉経するまで、女性は毎月生理とつき合っていかなければなりません。
ただ出血するだけならまだしも、歩けないほどの痛みに悩んでいる方もいらっしゃいます。
もちろん、生理痛の緩和には
- ストレスをためない
- 体を冷やさない
- バランスの良い食事をとる
などの対策も必要ですが、わかっていても忙しい毎日の中で実践することは難しく、市販の痛み止めなどで何とかしのいでいるのではないでしょうか。
実際、避妊目的で服用を始めた方からも、生理痛が緩和された、という声が多く聞かれるようです。
ピルの副作用について知っておこう
服用を開始してからしばらくの間ではありますが、副作用と見られるトラブルが起こることがありますが、いずれにしても2~3周期で減少するので慌てず様子を見ましょう。
かつて主流だった中用量ピルは確かに副作用も今より強かったようです。副作用を抑えるために開発された低用量ピルならほとんど心配ないといってよいでしょう。
それでも、副作用と見られる症状についてはきちんと理解しておく必要がありますね。
軽い吐き気は数日で治まる
初めて飲んだ場合には軽い吐き気が起こることもありますが、たいていは2~3日で治まる場合がお多いようです。
もし治まらない場合にはピルの種類を換えることもあるので、医師に相談してみましょう。
不正出血や腹痛が起こることも
低用量ピルは副作用として不正出血が起こることが多いようですが、人工的にホルモンバランスを変化させているので、子宮内膜が排出されるまでに時間がかかってしまうためです。
服用中は医師の指示に従い、しばらく様子を見てみましょう。
不正出血や腹痛は婦人科系の病気や感染症の可能性もあるので、事前に疾患がないかどうか確認してもらってから服用を始めると安心ですね。
乳房の痛みや張りを感じる
人によっては乳房が張って多くなる、皮膚も敏感になって服が触れてるだけで痛いと感じることもあるようです。
体調がよくなり食欲が増す
副作用といっていいのかわかりませんが、月経周期が整うことにより体調がよくなり食欲が増す傾向が見られます。
その反動として体重が増えてしまう方もいるようで、それが「ピルは太る」という誤った認識の元となっているようです。
その他に見られる副作用と思われる症状
副作用の感じ方も個人差が大きく、全くない方も多いのですが、初めて服用した時には以下のような症状が出る場合があります。
- 悪心
- むくみ
- 倦怠感(だるさ)
- 頭痛
- 微熱
など。
気になる場合には、処方してもらった医師に相談しましょう。
指示通りに服用すれば安全な薬だけど、ピルを飲んではいけない人もいます
ピルは用量用法を守って医師の指示通りに服用すれば安全な薬ですが、一部の方には服用がNGとされています。
妊娠している可能性のある人
血栓症のリスクが高くなるため、服用は禁止されています。
- 産後
- 授乳中
の方も母乳の出が悪くなるため服用はしない方が良いとされています。
中学生など思春期の人
初潮からまだ数年の年齢ではまだ体が未成熟なので、中学生ではダメというクリニックが多いようです。
およそ16歳前後にならないと処方してもらえないことが多いので、どうしても必要な場合は医師とよく相談の上、リスクなどもしっかり理解する必要があるでしょう。
喫煙習慣のある35歳以上の人
1日15本以上タバコを吸う35歳以上の方は、ピルの服用で血栓症のリスクが高まるため、服用は慎重にしなければならないとされています。
40歳以上になると喫煙していなくても処方を断られる場合があります。
糖尿病など持病のある人
以下に該当する方は服用できないとされています。
- 過去に血栓症を起こした方
- 血液が固まりやすい方
- 高血圧
- 糖尿病
- 術後2週間以内
- 手術前4週間以内
など。
乳がん、子宮がんなど女性のがんにかかっている人
女性特有のがんは女性ホルモンに由来する病気であるため、症状を悪化させる可能性もあり、女性ホルモンそのものであるピルを飲むことは出来ません。
正しく飲めばメリットもたくさんあるピル!
ピルはあくまでも一時的な避妊や婦人科系の病気の治療のために生理をコントロールするために使うもので、生理を長期間延ばすことはできないと思って下さい。
また、絶対に避妊できるかというとまれにではありますが失敗することもあるのです。
とはいえ月経にまつわる不調に悩む女性にはメリットが多い薬であることも事実です。どのようなデメリットや副作用があり得るのかをきちんと理解して服用すれば安全な薬です。
痛み止めだけで月経を乗り切ろうとするのではなく、ピルも上手に利用して快適な生活を手に入れませんか。
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