視線恐怖症とは?その原因と治し方。ツライ症状だけど完治する病!
Date:2017.09.05
「視線恐怖症」という言葉を聞いたことがありますか?
- 相手の視線が気になって会話に集中できない
- 誰かと目が合うと、悪口を言われているように感じる
- 自分の視線が誰かに不快感を与えていないか不安でならない
視線恐怖症とは、こうした恐怖や不安を理由もないのに感じてしまう、とても苦しい症状です。
身近な人、あるいは自分自身に、心当たりがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
つらい症状である一方、視線恐怖症は適切な対応できちんと「完治する」病であるとも言われています。
今回はこの視線恐怖症について、症状や原因、完治へ導くためのポイントをまとめていきます。
この記事の目次
【1】視線恐怖症って何?どんな症状?
視線恐怖症は、まだ世間一般ではなじみの少ない言葉かもしれません。
いったいどんなものなのでしょうか?
1.対人恐怖症の症状の一つが「視線恐怖症」
視線恐怖症は、いわゆる対人恐怖症(社交不安障害)の数ある症状のうちの、ひとつです。
対人恐怖症は、人と関わることに対してさまざまな不安や恐怖を覚える病で、日常生活にも大きく支障をきたします。
遺伝子学的に日本人には多いとされており、中でも女性患者は男性患者の2倍程度にのぼるとも言われています。じつはとても身近な病なんです。
対人恐怖症の中でも、「視線恐怖症」の特徴は、その名のとおり視線に関する不安や恐怖を強く感じてしまうことです。
人や自分の視線を意識しすぎてしまい、悪い想像が頭から離れなくなります。
冒頭に挙げたような
- 相手の視線が気になって会話に集中できない
- 誰かと目が合うと、悪口を言われているように感じる
- 自分の視線が誰かに不快感を与えていないか不安でならない
こうした感覚が、常に本人を苛みます。
2.他の病気を併発しやすい
視線に関する恐怖や不安が、人のいる場所ではいつでもどこでも、つきまといます。
そのストレスから逃れるために、外出を避けるようになる人も多く、結果的にひきこもってしまうケースも少なくありません。
激しいストレスが長期にわたり続くため、鬱の症状を引き起こしてしまうケースもあります。
また、公共の場での恐怖と緊張から、パニック障害を併発する場合もあります。
さらに、恐怖や不安から逃れようとお酒を飲む人も多く、アルコール依存症になる患者が多いのも、対人恐怖症全般の特徴です。
このように、視線への恐怖だけでなく、
- ひきこもり
- 鬱状態
- パニック障害
- アルコール依存
など、さまざまな弊害が重なり合い、より苦しむケースが多いとされています。
3.視線恐怖症、4つの代表的症状
視線恐怖症は、その症状によりおおまかに4つに分類されています。
- (1)他者視線恐怖症
- 人からの視線に極度に怯える症状です。他人の視線が気になって仕方ない。みんなが自分を笑っている気がする。何をしても見られている気がする。といった状態です。
- (2)自己視線恐怖症
- 自分の視線が相手に与える影響を、極度に恐れる症状です。目が合ったことで不快に思われたのではないか。目つきが悪いと思われているのではないか。と異常に気にしてしまいます。
- (3)正視恐怖症
- 近くにいる人と目を合わせることに対して、強い恐怖を抱く症状です。「まっすぐ目を見るのは気まずい」という程度の感覚ではなく、制御できないほどの恐怖や不安が涌き上がり、コミュニケーションに支障をきたします。
- (4)脇見恐怖症
- 視界の端に入った人をじっと見てしまい、強烈な罪悪感に苛まれる症状です。この症状は二段階に分かれています。
まず「視界に入った人が気になって仕方ない、凝視せずにはいられない」という症状。そして、そのことについて「嫌な思いをさせた、迷惑をかけた」と思い悩むという症状です。
強迫観念のようなもので「視界に入り込んだら見ずにはいられない」ため、髪を伸ばして視界を塞いだり、ずっと下を向いて歩くなどの行動をとるケースもあります。
いずれの症状も「ちょっと気になる」くらいの軽度のものから、生活に支障をきたす重度のものまでさまざまです。悪化するにつれ外出がつらくなり、人を避けるようになります。
また、症状は4つに分類されていますが、このうち1つだけを発症するという人は少なく、他者視線+脇見恐怖症、自己視線+正視恐怖症、というふうに、複数のパターンが混在することが多いようです。
4.たとえばこんなことで悩んでいませんか?
でも、日本人はシャイな気質を持っているので、「他人と目を合わせるのなんて、誰だって得意じゃないよ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
今この記事を読んでいるあなたが、「自分は視線恐怖症なのか?それとも、単に気にしすぎなのか?」と悩んだとき、何を目安に判断したら良いのでしょうか。
たとえば、あなたは次のようなシチュエーションに心当たりがありますか?
- どうしても、相手の目を見て話せない
- 人の視線が気になって仕方なく、人混みから逃げてしまうことがある
- 自分の姿が「変だ」と思われている気がしてならない
- 会話するとき、顔や身体がこわばる
- 自分の動きがおかしくないかが気になって、ぎこちなくなる
- こちらを見ている人が自分を笑っているように感じる
- いつも誰かに見られているようで、落ち着かない
- 電車に乗っているとき、正面にいる人を見ることができない
- 学生時代の授業中、または今の職場で、どこを見ていいかわからないときがある
- 目が合うことで「人に迷惑をかけた」と感じる
- 視界に入る人をつい見てしまわないよう、髪などで視界を覆っている
- 発表など、大勢の視線を感じると頭が真っ白になる。動けなくなる。
もしもこうしたことを日常的に経験していて、そのことで生活や人間関係に支障が出ているようならば、視線恐怖症になっている、もしくはなりかけている可能性があります。
視線恐怖症は、メンタルの病です。症状が長引けばそれだけ治りも遅くなります。早めに医療機関を訪れ対策をとることが、早く完治する一番のポイントです。
【2】視線恐怖症の原因は?性格?きっかけ?
では視線恐怖症が起こる原因は、いったいどんなことなのでしょうか?
1.性質的な要因
視線恐怖症は、その人の性質的(性格的)な要素と、恐怖や不安をかきたてるような何かしらのきっかけという、2つの要素が重なり合うと起こりやすいと言われています。
性質的な要素として主に注目されるのは、次のようなもの。
- 自信がない
- 感受性が強い
- 慎重
- こわがり
- 内気
- 人見知りしやすい
- よく気を遣う
- きまじめ
- 頑固
- 神経質
- 完璧主義
- 自意識が強い
- クヨクヨしやすい
などです。
子どもの頃から現在までを見て、上記のような性格的要素が強い人には、視線恐怖が起こりやすい傾向があるようです。
でも、そうした性格でも視線恐怖症にならない人はもちろんたくさんいます。視線恐怖症になるケースでは、他にはっきりとした「きっかけ」となる出来事を経験している人が多いのです。
2.発症を引き起こす「きっかけ」
この「きっかけ」は、最近のこととは限りません。また、大きな出来事とも限りませんし、そもそも自分に起きた出来事ではない場合もあるのです。
たとえば、
- 子どもの頃、友達が人前で失敗するのを見た
- 同僚が叱責されているのを見て怖くなった
といった出来事も、充分に発症要因になり得ます。
そしてもちろん、
- いじめを受けた経験
- 「発表のとき声が震えた」などのトラウマ
- 「目つきが悪い」などと言われた記憶
- 誰かと目が合った瞬間、たまたまその人が笑った(馬鹿にされたように感じた)
などの自分で経験した出来事も、当然きっかけとなり得ます。
3.その他の要因
他にも、家庭環境や日本人特有の遺伝子傾向なども、視線恐怖症の一因になると言われます。
日本人特有の遺伝子傾向というのは、セロトニントランスポーター遺伝子、というものにまつわる傾向です。
人に安心感を与え前向きな気分を呼び起こす「セロトニン」ですが、じつはこの生まれ持ったセロトニントランスポーター遺伝子のタイプによって、働き具合が変わってきます。
よく働く順に(前向きな気分になりやすい順に)上から、
- LLタイプ
- SLタイプ
- SSタイプ
と3種類に分かれるのですが、日本人の3人に2人は最もセロトニンを伝達しにくい「SSタイプ」、言うなればネガティブタイプの遺伝子を持っているそうなのです。
こうした日本人特有の気質も含め、さまざまな要因が重なり合って引き起こされるのが、視線恐怖症という病です。
だから、あなたがもし「自分の性格のせいでこうなってしまったの?」と思い悩んでいるのであれば、決してそうではない、それだけではないと把握しましょう。
自分を責めてしまいやすく、責めることで悪化するのも視線恐怖症の特徴なのです。
【3】完治への道(1)自分で気をつけるポイント
視線恐怖症をはじめ、対人恐怖症などメンタルの病は早めの治療が肝心です。治療にとりかかるのが早ければ早いほど、快復のスピードも速くなります。
この章では、あくまでも基本は医療機関での治療を想定しつつ、自分でも気をつけることのできるポイントをお伝えしていきます。
「まだ病気というほどひどくはないけど、このままでは視線恐怖症になってしまいそうだな」と心配な方にも役立つはずです。
1.きっかけを把握する
無理のない範囲で、視線恐怖症の要因となった「きっかけ」を探ってみましょう。
もし落ち着いた気持ちで振り返れるようであれば、それを一度紙に書き出してみるのもいいかもしれません。言葉にして紙の上に書き出すことで、頭の中のモヤモヤを外へ吐き出す手助けになるケースもあります。
「きっかけ」は、上でも書いたとおり、最近の出来事ではなかったり、自分が直接経験したことではなかったりもします。また、自分でも「こんな些細なことで?」と感じるような出来事である場合も、案外多いのです。
- 子どもの頃に経験した嫌なこと
- 発表やスピーチの際に「恥ずかしい」と感じたこと
- 他の人が起こられている場面を見たこと
などで、「これがきっかけかもしれない」と思うことがあれば、把握しておきましょう。
ただし、「思い出すのがつらい」と感じたら、自分一人で無理をせず、必ず医師やカウンセラーに相談しましょう。
2.自信を育てる(自分を好きになる)
どんな症状であれ、視線恐怖症に悩む方に共通するのは「自信がない」ことです。
- 変な振る舞いをしていないか
- おかしな人だと思われていないか
- 迷惑をかけてしまったんじゃないか
こうした恐怖を軽減していくために、少しずつ自分に自信を持つトレーニングをしていきましょう。
自信を持つというのは、なにも「自分はスゴい」と感じることではありません。弱いところもある、ダメなところもある。失敗だってする。でも、そんな自分を受け入れて好きになってあげること。それこそが「自信を持つ」ということです。
- 自分の良いところをどんどん褒める
- 自分の弱いところ、ダメなところも「誰にだってあるさ」と受け入れる
- やりたくないことは手放し、やりたいことをやってみる
こうした心がけを実践し続けていると、少しずつ自己肯定感を高めることができます。
3.徐々に価値観を変えていく
自己肯定感も含め、あなたの価値観全体を見直すことも、視線恐怖症の克服に役立ちます。
たとえば歴史に残るような世界的デザイナーや女優など、「普通」の枠からはみ出しているからこそ輝いている、という人はたくさんいます。
他人に馬鹿にされたり笑われたりするのは、誰だってムカムカするし、不快でしょう。でも「笑われているのではないか」と不安でたまらないのは、不快以上の「恐怖」を抱いているからですよね。
本当は、怖がることなんてないんです。たとえ笑われたって、自分が自分を好きでいることさえできれば、堂々と胸を張っていられます。(そう、憧れのあの女性たちのように!)
価値観は、生まれてから数十年もかけて培われたものです。急にがらりと変えることは難しいでしょう。無理にそうするべきでもありません。
でも徐々になら、変えていくことができます。憧れの人の言葉に触れたり、本を読んだり、いろいろな価値観に触れてみましょう。
少しずつ、一歩ずつでよいので、自分の考え方や感じ方をもっと楽な方へ変えていけるよう試してみませんか?
4.食事や生活でセロトニンを増やす
質の良い睡眠に欠かせない脳内物質「セロトニン」は、鬱の症状を緩和することでも有名です。
情緒を安定させて不安を取り除き、前向きな気持ちを保つ働きもあるため、セロトニンを意識して増やすことは視線恐怖症の改善にも大いに役立ちます。
セロトニンは、日々の食事や生活習慣で誰にでも増やすことができます。
積極的に食べていきたい食品は、
- ナッツ類
- 乳製品
- 魚
- 大豆製品
など。
また、日々の習慣で最も気をつけたいことは、
- 早寝早起き
- 規則正しいリズムで生活する
といったことです。
5.あせらない、へこまない
視線恐怖症をはじめとするメンタル系の病は、治療中に「本当に治るのだろうか?」と不安になる方も多いでしょう。
でも、大丈夫。自分に合ったお医者さんのもと、まじめに治療を続けていれば、視線恐怖症は必ず快方に向かいます。諦めなければ、必ず「苦しくない瞬間」は来るのです。
また、治療中に「恐怖がうまく克服できない」「やっぱり視線で迷惑をかけてしまった」などと感じることがあっても、決してへこむことはありません。すぐにできなくて当たり前です。
根気よくトライ&エラーを繰り返している、その状態こそが「完治への道」なのだと考えてください。
【4】完治への道(2)医療機関での治療について
次に、医療機関を受診する際に押さえておきたいポイントをお伝えしましょう。
1.気づいたらすぐ受診する
繰り返しになりますが、可能な限り早めの治療が、早い快復に繋がります。
視線恐怖症に苦しむ人は、
- 病院で人と対面する不安
- プライド
- 投薬への抵抗感
などから受診が遅れることが多いと言われています。
でも、早く行けばそれだけ苦しい期間を短縮できます。視線恐怖症に苦しんでいる、と自覚した際には、ぜひ医療機関を探し、予約だけでもすぐに入れてしまいましょう。
2.投薬を怖がりすぎない
治療の際、薬を飲むことに対して抵抗感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
視線恐怖症の症状は、薬を飲むことで比較的すんなり楽になることも多いのです。適切な投薬は、敵ではなく、大きな味方になってくれます。
納得しないまま飲み続けるのも良くありませんが、頭ごなしに「薬は一切飲まない」というのも賢い選択とは言えません。投薬治療を怖がりすぎないのも大切なポイントです。
3.根本治療にはカウンセリングが効く
症状は投薬で楽になることが多いのですが、視線に対する恐怖心そのものは自身の考え方や感じ方から発生しています。
必要であれば、カウンセリングも一緒に受けられる病院を選びましょう。カウンセリングは恐怖や不安の根源を取り除き、恐怖症の再発を防ぐ役割も担います。
4.医師・カウンセラー選びは、相性を重視する
メンタルの病気では、とくに医師やカウンセラーとの関係が大切です。
自分の内面に、長期間にわたって関わる相手ですから、「合わないな」と感じたら、すぐ別の医師・カウンセラーを探すようにしましょう。
医者も患者も人間です。相性の合う・合わないは誰にでもあります。「この人には話しづらいな」と感じたり、「ちゃんと聞いてくれてるのかな?」と疑問に思うことが続いたりしては、治療の効果も期待できません。
信頼できる、相性の良い医師・カウンセラーと出会えれば、安心して治療に専念できます。
【まとめ】早めの対処が心穏やかな日々に繋がる
本人にしか分からない恐怖や不安。苦し過ぎて絶望的な気持ちになることもあるかもしれません。
でも、視線恐怖症は、適切な治療を焦らず続けていれば、必ず快復に向かいます。
気づいたらすぐ信頼できる医師を探す。ここがポイントです。我慢せず、でも焦らずマイペースな治療を心がけ、心穏やかな日々を目指しましょう。
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